特集
シン・宇宙時代
人類の月面着陸から半世紀以上が経過した現在、宇宙は私たちの生活と切っても切り離せない領域となりました。またテクノロジーの急速な進化は宇宙を具体的な「生活圏」と想定するまでになり、事業を推進する主要なプレイヤーも一部超大国から民間企業へと移りつつあります。
その一方で、単なる有用性だけでは語れない不思議な魅力が宇宙にはあります。一見無謀とも思われる関連プロジェクトが発案・実行されるのは、人間の尽きることのないロマンがあればこそ。宇宙は依然として憧れの対象であることもまた事実なのです。
そんなアンビバレントかつエキサイティングな世界である宇宙に、今後デザインはどのように関わっていくのでしょうか。そして宇宙のデザインは、どのようにテクノロジーやビジネスと融合し、わたしたちの生活をどう変えていくのでしょうか。今号の特集でより深く迫りたいと思います。
Vol.224 | 2023年06月30日 発売 |
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定価: | 1,800円 |
016
宇宙からの視点で再考する人間、テクノロジー、デザイン。
気候変動、コロナ禍、戦争、資源争奪、AIの急速な台頭―2020年代を見舞う荒波のさなか、宇宙に目を向けることで私たちが得られる視座とは。Takramディレクターの緒方壽人さん、人工流れ星の実現を目指すALEの岡島礼奈さん、共創型戦略デザインファームBIOTOPEの佐宗邦威さん、異なる立場から宇宙に関わる3人が21世紀半ばまでを射程におき、長期的な視野で「宇宙とデザインの未来」を語り合った。
022
風とともに宇宙へ
岩谷技研の気球遊覧への挑戦
2001年に元NASA技術者のデニス・チトーが世界で初めて自費で宇宙へ行ってから20年余。近年では民間人が次々と飛び立ち、旅行サービスを展開する企業は急成長を遂げている。しかし費用はまだまだ高額で、事前訓練が必要なうえ、安全性は保証されていない。そんななか、日本から気球での宇宙遊覧サービスを目指すスタートアップがある。宇宙を目指す気球とは—札幌にある岩谷技研を訪れ、「安全な宇宙遊覧」を支える技術に迫った。
028
月での暮らしは地球を変えるか
— 宇宙と地球をつなぐものづくり
「地球以外の星に住む」。人類が描くその夢の前には、真空状態はもちろん、強い放射線や過酷な寒暖差など、数え切れないほどの課題が山積する。しかし、その課題解決に向けた青写真には、宇宙開発だけでなく、地球上での私たちの暮らしをも大きく変える可能性がある。宇宙と地球をつなぐものづくりのビジョンを描き、挑戦を続ける日本企業3社を取材した。
034
隔星遺伝
作画/肋骨凹介
038
オフワールド・エコノミーの開拓に挑むベンチャー企業
人類にとって最後のフロンティアと言える宇宙。しかし、地球から月に至る範囲はすでにビジネスの現場へとその意味を変えつつある。この「オフワールド・エコノミー」の開拓にいち早く挑むベンチャー企業は、宇宙における民間ビジネスの可能性と多様性を示す存在だ。ここでは、革新的なアイデアと卓越した技術力を持つ海外企業3社をピックアップする。
042
哲学的問いから始まる
宇宙体験の空間づくり
2021年7月、中国・上海に世界最大級の天文博物館「上海天文館」がオープンし、大きな注目を集めた。内部の展示デザインを手がけたのは、エキシビションデザイナーのアレクサンダー・ブラント。現代アート、教育、テクノロジーの幅広いバックグラウンドを持つブラントに、天文博物館のデザインフィロソフィー、天文学と宇宙、地球に住むわれわれの日常生活との関係性を尋ねた。
046
宇宙開発を根本から変えたスペースXは、なぜ成功したのか?
ファルコン9ロケット、ドラゴン補給船、クルードラゴン宇宙船、スターリンク衛星群。これらはすべて米国の宇宙開発企業、スペースX によって開発、運用されている。どれかひとつを開発、運用するだけでも大変なことだが、すべてやってのけている。しかも、創業からわずか20年の間に。スペースX の成功は、長い間政府が主導するべきだと考えられていた宇宙開発を、民間企業がリードする分野へと劇的に変化させた。なぜ、これほどまで短い期間でここまでの地位を確立することができたのか、考察してみたい。
050
袴田武史(ispace社CEO)に聞く、
リアルな宇宙ビジネス
月への輸送ビジネスと月面の資源探査、将来的には月を人類の生活圏にするビジョンを掲げる日本企業のispace。足掛け13 年、とうとう民間企業初となり得る月面への着陸寸前まで到達しながら、今回はあと一歩で及ばなかった。その約1カ月後、本誌の独占インタビューに応じた袴田武史CEO の目は輝きを失うことなく、しっかり未来を見据えていた。宇宙開発における技術のほかに、デザインに生かせる知見を聞いた。
056
地球上から銀河系の謎の解明に挑む
ソフトウエア・テレスコープの可能性
宇宙開発という言葉から想起される多くは、月や火星への移住、宇宙旅行といった宇宙に飛び立つことを前提としている。一方、スクエア・キロメートル・アレイ・オブザーヴァトリーは、地球にいながらにして銀河系の謎を解明しようという、これまでにない電波望遠鏡の開発だ。そこではソフトウエアの開発が鍵を握るという。
062
宇宙で生活した金井宣茂が見る
人類のニューフロンティア
2017年12月から18年6月にかけて、国際宇宙ステーション(ISS)に168日滞在した金井宣茂。現在は、宇宙飛行士の訓練や管制室での仕事とともに、ISSで使う機器や将来月探査に向けた与圧ローバなどの開発にも加わり、意見を出している。宇宙での長期滞在という貴重な経験を持つフライトエンジニアは、いつか訪れるであろう宇宙で暮らす人類の姿をどのように見据えているのだろうか。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の筑波宇宙センターで語っていただいた。
004
Close-Up
鈍考/喫茶 芳
075
LEADERS
祖父江 慎(ブックデザイナー)
080
Sci Tech File
木に登るからわかる樹木の多様な生存戦略
086
田川欣哉のBTCトークジャム
ゲスト:民秋清史(モルテン代表取締役社長/最高経営責任者)
092
Insight
時と歩むラグジュアリー。
LVMH メティエ ダールCEOが示す最高峰への約束
098
Insight
日建設計が提案するポスト・コロナ時代の新たなワークプレイスのかたち
104
Insight
タイヤの会社、ブリヂストンから始まったロボットベンチャーへの情熱
112
TAKT PROJECTの東北考
「自分」という引力から離れること
116
& DESIGN
フード(君島佐和子)、インテリア(土田貴宏)、ビジネス(長谷川敦士)、ブック(宮後優子)
121
クリエイターズナビ
カレン・チャン、ディグラフ、シャーロット・テイラー、髙橋正実、ものや
※お詫びと訂正
いつも「AXIS」をご愛読いただき、ありがとうございます。
「AXIS」2023年8月号の掲載内容に下記の記載不備がございました。
■P.30
【誤】OHBAYASHI →【正】OBAYASHI
訂正して、関係各位ならびに読者の皆様に深くお詫び申し上げます。
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