環境に働きかける建築

特集

環境に働きかける建築

「リジェネラティブ」という言葉が、さまざまな分野で浸透しつつあります。「環境再生」とも訳される このワードには、単に現状を維持するのではなく、積極的に多くの物理的システムを改善することで、 より良い状態に環境を再生していくという意思が込められます。深刻化する環境問題は、サステナブルな発想だけでは克服できない事態に陥っています。環境に「やさしい/負荷をかけない」というサステナブ ルなアプローチからさらに踏み込み、環境の「再生/回復」に寄与していくという、よりアグレッシブ な態度こそ、今デザインに求められる姿勢ではな いでしょうか。そのためには「人のため」という従 来の仕組みや方法論ではなく、(社会)環境のためであったり多様な生物のためといったより包括的かつ長期的な視点からモノづくりに取り組むことが欠かせません。今号の特集は、そんなリジェネラティブな建築 の可能性を通して、建築と環境の新しい関係性を見出していきます。

Vol.2212022年12月28日 発売
定価:1,800円

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018

地球的視野から考える リジェネラティブ・アーキテクチャーに先立つマインドセット

建築家のマイケル・ポーリンは、リジェネラティブ・デザインの提唱者のひとりとして、2007年に建築設計事務所エクスプロレーション・アーキテクチャーを設立して以来、建築設計におけるバイオミミクリーの応用に焦点を当てている。氏にリジェネラティブな環境や建築の実現について語ってもらった。

地球的視野から考える リジェネラティブ・アーキテクチャーに先立つマインドセット

022

「ディジェネラティブ」から 「リジェネラティブ」へ 多角的な課題を捉えるランドスケープデザイン

2019年、シアトルの海沿いに竣工したエクスペディア本社は、かつて工業用地として造成された沿岸埋立地が自然溢れる場に生まれ変わり、大きな注目を集めた。このプロジェクトを手がけたランドスケープデザイン事務所、サーフェスデザインにリジェネラティブアーキテクチャーに対する想いを尋ねた。

「ディジェネラティブ」から 「リジェネラティブ」へ 多角的な課題を捉えるランドスケープデザイン

028

アラップが考える、 建築と自然の新たな境界線

ロンドンを拠点とする建築エンジニアリング集団、アラップ。世界40カ国に約1万4,000人のスタッフを擁し、160カ国以上で建築プロジェクトのデザインやコンサルティングを行ってきた同社にとって、「リジェネラティブ」は今最も大きなテーマのひとつだという。イギリスと中国における事例を取材した。

アラップが考える、 建築と自然の新たな境界線

032

環境をつくり変える、 リジェネラティブ・アーキテクチャー10選

自然環境の再生や回復に寄与するような建材や構法、都市開発の新たな手法がさまざまな最新テクノロジーも活用しながら模索されている。一方で、環境問題が顕在化している地域や自然災害による被災地においても、斬新な発想で今までにない価値を生み出そうとする多様なプロジェクトが世界各地で実施されてきた。建築から素材開発まで、環境のリジェネラティブを見据えた取り組みを紹介する。

環境をつくり変える、 リジェネラティブ・アーキテクチャー10選

042

自然の働きのなかに人間の働きを織り込んでいくリジェネラティブな都市の実現へ向けて

リジェネラティブをこれからの社会や都市生活に必要なキーワードとして掲げてきたのが、建築家であり、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)教授の阿部仁史である。自ら参画する国際共同プロジェクトのコンセプトとして採用し、その成果として2022年春、「リジェネラティブ・アーバニズム展」を開催し、ディレクターを務めた。1960年代に丹下健三らがメタボリズムという言葉を介して建築運動を展開したのと同じように、リジェネラティブというまだ定着していない言葉を多様な人々を巻き込みながら深掘りしていくことで、コンセプトを重層化させ、大きなうねりにしていくのが狙いという。

自然の働きのなかに人間の働きを織り込んでいくリジェネラティブな都市の実現へ向けて

048

脳科学を生かし、人間性を再生させる建築

「リジェネラティブな建築を考えるためには、先史時代からの人類が生きた様を思い出すのがいい」。 大手建築設計事務所にフェローとして招かれた分子発生生物学者は、こう語っている。彼の言葉から人間性を再生させ得る建築へのヒントを探りたい。

脳科学を生かし、人間性を再生させる建築

052

泥の可能性と、「ケア」と「シェア」の精神

アナ・ヘリンガーは、ユネスコの建築部門で名誉教授を務めるドイツ人建築家だ。彼女は、地域開発において最も重要なことは、その土地の資源を大切に使 用することであるとし、外的な要素に依存しないことを基本理念に掲げている。泥、土、地球……。言葉にこだわらない彼女は、地表を覆う素材こそが万能の、 リジェネラティブな建築資材であると語る。

泥の可能性と、「ケア」と「シェア」の精神

058

竹中工務店が見出した 「木」と「古民家」の潜在能力

竹中工務店は近年、ハード面だけなく、将来の社会のありたい姿を描いて「まち」としての機能を高めていく活動に力を入れている。多様な主体と協働して行う、「キノマチ」「古民家再生」「ミズベリング」などの取り組みはその代表例だ。 同社まちづくり戦略室の高浜洋平にコミュニティが生き生きとする再生のあり方について聞いた。

竹中工務店が見出した 「木」と「古民家」の潜在能力

062

「現象のような建築物」とは ―リジェネラティブを社会実装するために

北海道に拠点を置くユートピアアグリカルチャーが進める「フォレスト・リジェネレイティブ・プロジェクト」は、森林を再生させながら放牧酪農と養鶏を行い、多様な動植物によって森を活性化させる実験的なプロジェクト。都市近接型のモデルファームのあり方を模索するこのプロジェクトに参画しているのが、ドミノアーキテクツ代表の大野友資、遺伝子研究者の片野晃輔、クリエイティブスタジオのノメナ代表の武井祥平の3氏だ。リジェネラティブな建築を社会実装していくにはどうすればいいか。3人に語ってもらった。

「現象のような建築物」とは ―リジェネラティブを社会実装するために

088

Insight

定義に抗うアフリカ・ファッション
ヴィクトリア&アルバート博物館の展示を読む

094

Insight

ソニー デザインセンター・ ヨーロッパによる「INTO SIGHT」 人々を巻き込み、 人々とともにあるデザイン

100

Insight

イタリアデザインの百科事典をつくる
ADIデザインミュージアム館長アンドレア・カンチェラート インタビュー

106

Insight

鉄道開業150年、 高輪築堤から考える日本の産業遺産

112

TAKT PROJECTの東北考

ハレとケの外側にある時間

006

Close-Up

エットレの家

071

LEADERS

ロッセッラ・メネガッツォ(ミラノ大学 文化・環境遺産学部 准教授)

076

Sci Tech File

植物の美しき構造をつくる 細胞間コミュニケーションの謎に挑む

082

田川欣哉のBTCトークジャム

ゲスト:前田瑶介(WOTA代表取締役CEO)

116

& DESIGN

インテリア(土田貴宏)、フード(君島佐和子)、ビジネス(長谷川敦士)、アート(太田睦子)

121

クリエイターズナビ

大島淳一郎、デレク・ウィルソン、梅原 徹、シル・シュ、中村壮志

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