特集
うみと。
海に対して多くの人が知っている事実、それは「海は大きい」ということです。地球の表面積の約7 割を占めるこの広大な領域には、多様な生物が凄み、鉱物資源が眠り、食料供給の面でも多くの恵みを与えてくれています。一方で、広大ゆえに知らないことが多いのも実態でしょう。海洋プラスチックを契機に環境汚染や生態系の崩壊などの課題は多くの人が知るところとなりつつあります。しかし、エネルギー、物流、漁業、観光、教育、海洋(海中)都市開発など、人類の持続可能な発展という視点から環境に配慮しどのように海を有効活用していくか。その展望と行動には、まだまだ多くの可能性が潜んでいます。今号の特集は、そんな海洋領域のポテンシャルに着目し、デザインがいざなう海と人との新しい関わりや海洋利用の新たな視点を取り上げます。
Vol.219 | 2022年09月01日 発売 |
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定価: | 1,800円 |
018
海洋の人類へのインパクトを探求する
海洋を航行する船を舞台に、知られざる海の謎の解明に挑む研究機関がある。調査対象は、海底マッピング、自然エネルギー、深海探求など7分野。調査内容を広く公開し、海への深い理解を促すことを目指すシュミット・オーシャン・インスティテュートのジョティカ・ヴィルマニ博士に話を聞いた。
022
海のエコシステムを回復させる海中彫刻
ジェイソン・デカイレス・テイラーは、海中彫刻という分野を開拓したアーティスト。パンデミックの最中も、キプロス島やオーストラリアの沖合で精力的に作品を発表しつづけた。自らダイバーであり、自然保護活動家でもあるテイラーに海中彫刻の意義を問う。
026
「負」をつくらない、これからの再生素材としての海藻
地球環境を再生する力を持つ「リジェネラティブな素材」としての海藻に目をつけ、その魅力を引き出し、育てている起業家やデザイナーがいる。世界各地の事例から、食材、原材料、そして海洋環境改善の担い手としての海藻のさらなる可能性を探る。
031
建設会社が海の環境保全に挑む大型海藻の苗をつくる技術開発
さまざまなポテンシャルを秘めた海藻だが、実は日本の沿岸では近年藻場が危機的状況に陥っているという。海藻は衣食住の素材として使えるというだけでなく、海中林とも呼ばれるほど生物多様性にも大きく寄与している。海藻の消失を再生・保全する技術をこの夏、鹿島建設が確立した。
034
船を使い海上で電気を運ぶパワーエックスの挑戦
海は人に多くの恩恵を与えてきた。しかし、人がまだ受け取る術を知らない恵みがある。洋上風力という巨大な潜在的エネルギーは、そのひとつだろう。スタートアップ企業、パワーエックスは、海上で生み出した電気をあえて「船」という原始的な手段で運ぶことで、受け取る術を見出そうとしている。海とエネルギー、そして持続可能性という3点が交差する場所に、どのようなデザインが描かれようとしているのだろうか。
038
「波」と「風」でエネルギー変革を目指すアヒル発電、エバーブルーテクノロジーズ
15世紀半ばから始まった大航海時代は、人々が未知の大陸の発見を夢見て海に乗り出した時代―エイジ・オブ・ディスカバリーとも呼ばれる―だった。生み出された莫大な富は社会の仕組みを変え、やがて産業革命へとつながっていく。そして今、産業革命以来のエネルギーであった化石燃料を、「波」と「風」に取って変えようとする試みがある。まだ見ぬ海の力を「発見」し、持続可能な方法で社会を変革しようとする挑戦は、新たな“大航海時代” の幕開けとなるだろうか。2社の取り組みを取材した。
042
スラムからリゾートまで、NLÉ による水上都市10年
オランダとナイジェリアに拠点を構える建築事務所NLÉは、手動で組み立てられる水上ハウス「マココ・フローティング・システム」で一躍注目を集めた。しかし、最初のプロトタイプは約4年で崩壊。NLÉを率いるクンレ・アデエミは、その改良を重ねながら、アフリカ全土に水上都市を建設するプロジェクトを推し進めている。
046
気候変動に挑む洋上都市「オセアニックス釜山」
2025年、韓国・釜山に新しい洋上都市「オセアニックス釜山」が生まれる。一見したところ、ここは360度海に囲まれ、住まい、研究、商業とさまざまな都市機能を担う夢のような場所に見える。だが実際には、気候変動による水害と闘う、近未来の社会と生活を実験するプロトタイプとして計画されているものである。
050
私たちは海を知らない海の宇宙ステーション「プロメテウス」が目指すもの
私たち人間は未だ海を知らない。この現状を変えるべく、海洋探検家のファビアン・クストーは、海底の宇宙ステーション「プロテウス」の建設プロジェクトを始動。ステーションのデザインを手がけるのは工業デザイナーのイヴ・ベアールだ。協働で開発した初期デザインが公開された。ふたりそれぞれの想いとは。私たちは海から何を学ぶべきか。
052
バーチャルな海洋環境が、海の意識を変える
知られざる海洋の世界をARやメタバースといったデジタル技術を駆使し、身近なものにしようとする試みが活発だ。認知やコミュニケーションを助け、拡張することで、海洋領域に対する意識の変化を促し、さらなるアクションにつなげていくことが期待されている。
056
パーリー・フォー・ジ・オーシャンズ、シリル・グッチ インタビュー 破壊するより保護するほうがビジネスになる
環境保護団体と聞くと学術的な組織か過激なアクティビストを想像しがちだが、パーリー・フォー・ジ・オーシャンズはそれらと一線を画している。海洋プラスチックを回収する組織を束ね、集めた素材をアップサイクルして、誰もが知るファッションやスポーツブランドと製品をつくり出す。若者の支持を集める理由を代表のシリル・グッチの言葉に探る。
060
海洋を取り巻く諸問題に、 デザインはどんなアクションをとれるのか 国際海洋デザイン会議
7月末、海洋問題に対してデザインに何ができるのかを考え、討論する第1回国際海洋環境デザイン会議が開催された。深澤直人の基調講演に始まり、日本と世界の海洋問題の現状や取り組み、課題について、海に接点を持つデザイナーやジャーナリストが登壇しプレゼンテーションを行った。そこから見えてきた海洋の諸問題に対し、デザインはどんなアクションをとれるのか。海とデザインの現在と未来を探る。
088
Insight
「椅子から建築まで」パトリック・セガンと八木 保がジャン・プルーヴェを語る
094
Insight
ディエベド・フランシス・ケレから、古くて新しいアフリカのサスティナブルを学ぶ
100
Insight
知覚情報としてのドローイングの可能性
106
Insight
根っからエシカルなものづくり「あしもと逸品プロジェクト」
006
Close-UP
石川県立図書館
065
LEADERS
ヴラディミール・ヤヴァチェフ
(クリスト・アンド・ジャンヌ=クロード財団ディレクター)
070
Sci Tech File
形態は機能に従う 驚くほど多様な脊椎動物の脳
村上安則(愛媛大学大学院理工学研究科 教授)
076
田川欣哉のBTCトークジャム
ゲスト:佐久間 衡(ユーザーベース代表取締役Co-CEO)
112
TAKT PROJECTの東北考
わからなさのポテンシャル
116
& DESIGN
ビジネス(長谷川敦士)、インテリア(土田貴宏)、アート(太田睦子)、フード(君島佐和子)
121
クリエイターズナビ
ホセ・デ・ラ・オ、垣根一允、金田充弘、ブラスト・スタジオ、クリスチャーナ・ウィリアムス
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