特集
夜と朝
2020年東京オリンピック・パラリンピックを契機に、都市を中心とした活発な夜の娯楽や交通の拡充が予感されるようになりました。「夜は帰宅するもの」「朝は出かける支度で慌ただしい」といった日常から解放されたとき、人は夜や朝にどのような豊かさを求め、行動するのでしょう。またそのような社会において、デザイナーの創造性が発揮される夜や朝は、どのようなシーンとしてわれわれの目の前に現れるのでしょうか。
今号では、「夜と朝」という、この地球を包む普遍的な現象に向き合う姿の数々を紹介します。環境、文化、経済、技術など、さまざまな尺度から捉える夜と朝のあり方に、次代をデザインするヒントが潜んでいるはずです。
Vol.196 | 2018年11月01日 発売 |
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定価: | 1,800円 |
表紙: | 表紙写真 五十嵐絢哉 |
016
極限環境の「夜と朝」
都市部から地方に至るまで、地球上のあらゆるエリアに人間社会が張り巡らされている一方で、「世界」には人間がまだ定住する場として選ぶことができない過酷な自然環境が存在している。標高8,000m級の山岳、極地、そして宇宙といった極限環境に訪れる夜や朝は、人間にとってどのような時間・空間なのだろう。
020
2020年の「夜」への眼差し
2020年東京オリンピック・パラリンピックが近づくこの頃、「ナイトライフ」「ナイトアクティビティ」「ナイトタイムエコノミー」といった夜の文化と経済にまつわるキーワードをたびたび耳にする。来たるオリンピックイヤーに向けて膨らむ「夜」と「文化」のイメージに、3名の識者がもつ眼差しを探る。
024
景色を一変させた、ダーン・ローズガールデ「ゲーツ・オブ・ライト」
国土の4分の1が海面下にあるオランダでは、斬新なアイデアで常に水と共存してきた歴史がある。全長32kmにわたる「アフシュライトダイク(締切大堤防)」もそのひとつ。同国のダーン・ローズガールデはこの歴史的堤防の水門をリノベーションし、光の反射を用いて夜の景色を一変させることで、再び自国の歴史を人々の記憶に刻み込んだ。
028
夜市と朝市にみる人を引き寄せる力
B級グルメや新鮮なフルーツが並び、若者や観光客らで賑わう台湾の夜市。まぶしく光る露店の明かりに照らされた街は、生き生きとした躍動感に溢れている。一方、日の出までまだ2時間近くもあるというのに、マイカーが列をなし、交通整理の笛が肌寒い空気をひっきりなしに震わせる青森・八戸の朝市には、生産者と消費者の新しい出会いがある。夜に朝に、溢れる活気に満ちた「市場」の魅力を訪ねた。
034
夜に広がる、スポーツ観戦の楽しみ、F1シンガポールグランプリの魅力
2020年夏の東京オリンピック。酷暑が予想されるなかでのマラソン競技をどうするかが話題となっているが、スポーツ競技としてオリンピック同様、多くの人の注目を集める自動車レースの最高峰F1は、いち早く夜の時間帯に着目し、ナイトレースを実施している。太陽の下で行うというイメージの強いスポーツ競技も夜の時間へと拡大しているのだ。「マツダがBMWを超える日 クールジャパンからプレミアムジャパン・ブランド戦略へ」の著者で自動車愛好家でもある山崎 明氏が夜のF1、シンガポールグランプリの魅力について語ってくれた。
036
建築と光
光と人間がつくり出す夜と朝の表情
グローバリゼーションが進み、都市は24時間空港を稼働させる。都市は空に向けて高層ビルを林立させるだけでなく、地下にも伸びつづけている。不夜城、地下都市が地球上に増え続けている現在、太陽の光や地球の自転と関係なく人間が時間をコントロールできるのだろうか? そしていずれ人は夜や朝をつくり出すのだろうか?
夜と朝を支配する陽の光。人工光と自然光、建築との関係の3つのケースを、その外と内から追った。
042
現代夜会服の奨め
夜の遊びは、創造の源です。華やかな夜の時間は、明るい朝の時間につながります。カジノや娯楽など、人々の夜の活動がますます活発化していくであろうこの先、ビジネススーツとパジャマの間に着る服に注目しました。衣食住、どれも優れたデザインの製品が生み出され、ファッションだけをとってもさまざまな選択が可能な日本ですが、ドレスコードや夜を楽しむ服といった概念は希薄です。オートクチュールのコレクションアイテムを身にまとうことは難しいかもしれませんが、各メゾンの2019年春夏コレクションを見るとスポーツウエアとの親和性の高い服が多く見られます。ダークスーツを脱ぎ捨て、スニーカーとTシャツの上に、ジャケットを替えるだけでも、メリハリのある1日を送れるに違いありません。身をあらため自分を表現してくれる個性あふれる服。しかし自然に身に着けられる服。そんな夜から朝の時間をいっそう楽しませてくれる現代の夜会服を集めてみました。
046
真夜中から朝へのスペキュラティブな音楽体験、マックス・リヒター「スリープ」
マックス・リヒターは実験的な作品で知られる音楽家。コレオグラファーやアーティストとの協業もさることながら、クラシックを起点にポスト・ロックの影響も受け、エレクトロニックミュージックを彷彿とさせる低周波音のリピートで若いファンから絶大な支持を得ている。その彼が作曲した「スリープ」は1曲が8時間の超大作。演奏会は深夜から朝にかけて開かれる。2018年5月のニューヨーク公演。会場に設置された160のベッドは演奏後ホームレスのシェルターに寄付された。リヒターの音楽はしばしばポスト・クラシックやポスト・ミニマリズムと称される。フィリップ・グラスやスティーヴ・ライヒはその先駆者だが、リヒターのファンは実験性を超えて、低周波からなる旋律が自らの暗く奥深い心のうちを刺激することを期待している。
050
Zeebra
夜の遊び方から、新たな経済や文化が芽生える
ヒップホップアーティストとして、東京を拠点に活動を続けるZeebraが語るのは「ナイトメイヤー」構想。欧州に広がる「夜の市長」の存在を通じて、夜に花開く新たな文化、新たな経済の可能性が見えてくる。
052
齋藤精一
夜のアクティビティの減少は、文化の衰退につながる
夜の出会いをルーツに立ち上がった、ライゾマティクス。そんな実体験を交えながら、建築分野のプロジェクトを中心に手がけるライゾマティクス代表の齋藤精一が語る、夜のインスタレーション、光の魅力とは?
061
LEADERS
カトリーヌ・ティケニス(エルメス財団ディレクター)
066
Sci Tech File
愛のコミュニケーションから探る、ショウジョウバエの聴覚情報処理の仕組み
076
Feature2
日本文化発信の未来
082
Feature2
サイモン・ライト( ジャパン・ハウス ロンドン企画局長)インタビュー
084
Feature2
諸外国の文化事業から潮流を読み解く
088
Feature2
対談 原 研哉×伊藤穰一 知らないを知る― “ 覚醒” から始まる新しい日本文化理解
098
INSIGHT
ロンドンを食の都に変えた男、東京に現る
102
INSIGHT
バーニングマンに見る、ボヘミアン的思考から生まれる街づくり
108
INSIGHT
私のデザインリファレンス 金野千恵(建築家)、三澤 遥(デザイナー)
114
田川欣哉のBTCトークジャム
ゲスト:宗像直子(特許庁長官)
121
クリエイターズナビ
秋山かおり、リョウ・キシ、小板橋基希、エミール・ツォベル & エイタン・ゴーレン、公文健太郎
126
& DESIGN
菅野 薫(テクノロジー)、土田貴宏(インテリア)、君島佐和子(フード)、太田睦子(アート)
130
書評― 創造へのつながり
大貫美鈴、角田陽太、大崎清夏
133
寺尾 玄 Pop Gap Creative
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