特集
超地域密着
食文化や伝統工芸といった地域のシンボルを再生の切り札とする動きが一巡した今、これからの地域とデザインの関わりを考えるうえで何がキーワードになるのか。今号の特集ではそのヒントを探ります。
地方移住などの機運が増し、新たな人脈やネットワークが形成されたことで都会では生み出せない価値の創出を目指す動きや、自らの暮らしを充実させたいという個人の営みが共感を呼び、多くの人を巻き込む共創につながっていく事例など……。地域の多様性に呼応するように、そのデザインアプローチや取り組みも実にさまざまです。資源も人脈も課題も豊富な環境下で、人と地域がデザインを通してどんな濃密な関係を築いていくのか。人、地域、デザインという3つの要素の関係性に注目し、地域とデザインのこれからを考えます。
Vol.210 | 2021年03月01日 発売 |
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定価: | 1,800円 |
表紙: | 特集題字:山田和寛 表紙写真:五十嵐絢哉 |
018
いざ地方へ 地域密着デザイン勃興の理由
筆者は、昨年5月から「山水郷チャンネル」というネット配信番組のホストとして、地域活性化のキーパーソンをゲストに迎えてインタビューを行っている。「山水郷」とは、私と一緒にこの番組のホストを務める井上岳一氏が著書「日本列島回復論」のなかで提唱した言葉で、中山間地域や田舎といった既存の言葉を避けて、地方を日本の未来の物語が新たに立ち上がる場として語るために井上氏がつくった造語である。
020
これからの地域との関わりをデザインする
人と地域がともに成長していく。地域の持続的な発展を見据えるそんな視線にこそ、これからの地域とデザインの関わりを考えるヒントがあるのではないだろうか。「ローカルデザイン」という言葉とともに、地域資源をデザインで押し上げる動きが全国に定着した今、それぞれの活動から生まれた成果が連鎖し、新たな価値を創出するという好循環も各地で生まれている。
地方に新たな足場を設けてまちの活性化に取り組み始めたチームや、地域から世界に向けてデザイン発信を行うスタジオなど、御代田町、いわき市、山形市といった3つのエリアの活動から次なるローカルデザインのヒントと地域に拠点を求める理由などを探った。
022
御代田町x熊野 亘、大月 均、前村達也、岡本 健
ローカルを目指す、あるいは根ざす動きの根底には世界的な都市化による問題が横たわる。2050年には世界人口の7割が都市に住むと国連が予測したのは18年のこと。日本では08年までは人口が増加し、それを境に急速な人口減少が始まっており、少子高齢化への歯止めのきかない状況が続く。創造の分野で感度を高めている人々が、このアンバランスにいち早く危機感を抱くのは当然の成り行きと言える。
026
いわき市xそこをなんとか
2020年、福島県いわき市に誕生した「そこをなんとか」は領域横断型デザインを目指すチームである。福祉・コミュニティ・まちづくり・食・伝統芸能・アートプロジェクトなど、さまざまな要素をアナーキーに結びつけ、地域を盛り上げたいと目論む。昨年始動したばかりだというのに、しかし、すでに大きな実績がある。というのも、実はこのチーム、いわき市が展開する「いごく」プロジェクトの中心メンバーが立ち上げたものなのだ。結成の音頭を取ったのは猪狩 僚。いわき市役所・介護保険課に所属する公務員である。
032
山形市xアカオニ
地域デザインのフロントランナー。そんなふうに評されることもあるアカオニは、山形市を拠点に活動を開始して今年で20年になる。キャリアの始まりはフォトグラファー集団だった。やがてそこから分化し、アカオニというデザインチームが誕生する。
038
ここにしかない土産物、ここにしかないパッケージデザイン
各地のデザイナーが手がけた、その地域の店舗やメーカーが販売する商品のパッケージ。必要以上に飾り立てることも、無理に背伸びすることもない。等身大とも言える、地に足がついた存在感が魅力だ。同じ土地に暮らし、近くで日常を共有しているからこそ、そのものの特徴を見事に捉えた、長く愛されるデザインが生まれる。
042
暮らしや仕事の場を開く超地域密着型建築家
ここ10年、地方に拠点を置く建築家が増えている。その活動は複合的で実践的だ。なぜ建築家は地方に目を向けるようになったのか。そして建築家の活動はどう変化したのか。まちづくりの現場から地方の建築デザイン、都市デザインの移り変わりを見てきた法政大学の杉崎和久の言葉を交え、地域密着型建築家のこれまでとこれからを考える。
045
渡辺 隆(静岡県磐田市)
地元行政や企業と連携し、地域建築の質を底上げする
渡辺 隆は静岡県磐田市を拠点に、公共建築を10件以上設計し、ヤマハ発動機をはじめとする民間企業の施設も多数手がけるなど、個人事務所の範疇を超えた幅広い実績を重ねる。地域に存在する既存の仕組みを使いこなして良質な建築物を設計する渡辺の仕事術に迫る。
048
関根健一(埼玉県富士見市)
当事者の視点で、地域の“当たり前”を変える
関根健一は脳性麻痺の障がいを持つ長女と向き合うなかで、建築施工から障がい者に特化した建築・コミュニケーションデザインの道へと入った。建築設計から公民館を使いこなすワークショップまでの幅広い活動を「あくまで娘のため」と語る関根の、当事者視点の地域づくりを紹介する。
051
岡 昇平(香川県仏生山町)
盛り上げず、小さな魅力を積み重ねてまちを豊かにする
岡 昇平は香川県の仏生山町で2000年代初頭に独立し、自ら設計した温浴施設を営みながら徒歩圏に10件以上の小さな拠点をつくり、運営もする。あえて「まちを盛り上げない」ことを意識しながら地域密着型の活動を展開してきた岡の、持続的なまちづくりの考え方を聞いた。
054
地域密着便り
6組のクリエイターたちの声
私たちの住む、北海道の東側・道東地方の人口は約91万人。北海道の約半分に及ぶ広大な土地にもかかわらず、100万人に満たない人口と自治体が点在しています。
060
徳島県神山町
プロセスを楽しむ、新しい地域らしさのつくり方
創造的人材やITベンチャーの誘致によりさまざまな新ビジネスを創出し、地方創生の成功例として全国的に知られる徳島県神山町。
2021年4月には大埜地という集落の一角に、新たに集合住宅20戸が完成する。開発に携わったプランニングディレクターの西村佳哲に話を聞いた。
064
岡山県西粟倉村
地域の「関わりしろ」に物語を紡ぐ
岡山県西粟倉村。兵庫、鳥取の両県と県境を接する人口約1,500人の小さな村に、今続々とベンチャー企業が設立されている。周辺自治体との合併を拒否し、独自の道をひた走る同村がつくり出そうとしているのは「関係人口」だ。総面積の93%が森林のこの村から「ローカルベンチャー」という言葉を発信し、自身もエーゼロを経営する牧 大介を訪ねた。
068
島根県津和野町
地域の歴史と暮らしを編む、人文的アプローチ
島根県鹿足郡津和野町は、太鼓谷稲成神社や殿町通りなどをはじめとする美しい景観が立ち並ぶ観光地。「山陰の小京都」「文教の里」とも呼ばれるこの地で、かつて旅館だった施設を使って町内唯一の高校・島根県立津和野高校に通う生徒を対象にした下宿運営を行う編集者・瀬下翔太に話を聞いた。
072
兵庫県豊岡市
パフォーミングアーツと温泉を通じて大交流を目指す
兵庫県豊岡市に、2013年、大交流課という耳慣れない名前の部署が誕生した。大交流とは今でいう関係人口の考えに近いと、同課課長の谷口雄彦は説明する。城崎国際アートセンター、豊岡演劇祭、芸術文化観光専門職大学と、演劇やダンス、温泉を軸に新たな人材の交流を促す、その意図を探った。
076
対談 新山直広×ジョラン・フェレリ
地域密着したふたりとともに新しい日本の地域活性化を考える
福井県鯖江市でデザイン事務所TSUGIを主宰する新山直広、奈良県十津川村で「空中の村」を立ち上げたジョラン・フェレリ。新山は大阪、フェレリはフランス・グルノーブルの出身だが、それぞれ鯖江市役所、十津川村役場の仕事からスタートし、今はともに地域を盛り上げるうえでのキーパーソンだ。ふたりに日本の地域活性化の新しい物語を語ってもらった。
006
Close-Up
神奈川工科大学 KAIT広場
083
LEADERS
柚木沙弥郎(染色家)
090
Sci Tech File
土の未来は人の未来 知っておくべき土の話
096
INSIGHT
東京のゴミをなくそう! What Design Can Do による国際チャレンジ
102
INSIGHT
パナソニックと富士通のデザイン部門トップが語った
「インハウスデザイナーの役割、そして未来」
109
クリエイターズナビ
サミュエル・ウィルキンソン、岡田 舜、八木義博、山本篤子、パピエ ティグル
114
田川欣哉のBTCトークジャム
ゲスト:田中絢子(COHINA 代表、ブランドディレクター)
120
& DESIGN
インテリア(土田貴宏)、フード(君島佐和子)、ファッション(大根田 杏)、アート(太田睦子)、ビジネス(長谷川敦士)
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