このレタス、ダメだそうです。販売できない。形が悪い、規格よりも小さい、そして、色が悪い……。
レタスの収穫は、日が上がらない朝4時ころから始めて、暖かくなる10時ころまでに終了しなければ、シャキシャキ感が失われてしまうとのこと。時間との戦いで、1日の収穫は少なくとも2,000個ほど。気が遠くなるような作業です。しかし、この生産者は、こだわりの無農薬生産なので大きさや形がどうしてもまちまちになってしまう。それらはスーパーに並ぶこともなく、ほとんどが捨てられてしまいます。
そんな市場に出しては“ダメな”レタスを、参加者がお気に入りのドレッシングを持ち寄り、みんなでおいしくいただくレタスバイキングが開催されました。開催したのは、生活協同組合パルシステム群馬が設立した「めぐるんま」という群馬産直協議会。今回ご紹介するのは、めるぐんまによる「くらぶち草の会」という活動です。その日の朝採れた、小さくて形が悪いものの本当に美味しいレタスを、生産者の和田さんにいろいろ教えてもらいながら、参加者が持ち寄ったドレッシングの品評会もかねて食べようというイベントです。
しかし、このの企画、おいしい・楽しい体験だけではありません。「畑のリアル体験」と銘打っているとおり、月に1度集まり、種植、草むしり、マルチ敷き(これは、私にやらせるためにわざと入れたのかも)、収穫、その間に課題提出までと盛りだくさんです。
摘まむのも一苦労の小さな種を地道に3個ずつ穴に入れて、砂をかけて、上から少し圧縮する。家庭菜園ではないので、気が遠くなるほど同じことを繰り返します。雑草が生えないように、苗床に平行になるようにマルチも敷きます。しかし、種を植えた穴からは雑草が生えてしまいます。気が遠くなるほど種を植えた穴から生えてきている小さな雑草を、野菜の苗と見分けながら地道に草むしり。
さらに、種や苗を持ち帰って自宅で育て、次回持ってくるという宿題を課せられます。参加者は、ひそかに闘志を燃やし、ラインやメッセンジャーで写真を送りあい、他の参加者の野菜の成長を見ながら、どうしたらいいかを和田さんに聞く。月に1度の“点”ではなく、継続して野菜を育てる楽しさと難しさを体験できます。そして、みんなで持ち寄り、自慢しあう。
大雨だろうが収穫はします。全員参加。種から植えて、草むしりまでしていれば、収穫に対する意気込みも十分です。そして、収穫後、しっかり商品用の袋に生産者情報の紙といっしょに入れて終了。袋代の30円も支払います。でも、さすがに商品としては出荷できないので、お友達に持ち帰り。
ところで、最近、シドニーの「オズハーベスト・マーケット」というスーパーが話題になっているそうです。大手スーパーなどから賞味期限が切れる前に処分される食品を譲り受け、それらを無料で提供しています。運営は市民団体「オズハーベスト」が行なっており、スタッフはボランティアで、店の家賃は趣旨に賛同したオーナーの厚意によって無料とのこと。賞味期限の数日前に、もう売れないからと小売店の棚から降ろされるもの多々あるそうです。
産業廃棄物とは、ナカダイが扱うような工業素材ばかりではありません。農業廃棄物は工業廃棄物と同等程度発生しています。購入したものを大事に使う、残さず食べるなど、私たちの認識できる状態になったものについては議論がされていて、オズハーベスト・マーケットのようなサスティナブルな動きも出てきています。フランスでは、ある一定以上の規模のスーパーが食品廃棄を禁止されています。
しかし、そもそも捨てられてしまうものの現状はあまり知られていません。工業・農業関係なく、世の中の全産業は効率化され、便利になり、生産者と消費者の距離が離れすぎているという議論は聞かれます。しかし、どんなに便利であっても、すべて効率的である必要はないと思います。私は、便利で効率的な産業に支えられる生活と、非効率だけど、時間をかけて、手間暇かけて楽しむ生活を両立させる社会をつくっていかなければならないと考えています。
くらぶち草の会の会長、佐藤さんと話をしても、課題は口にしますが、現状を嘆くことはしません。こういう楽しい体験を通して、農業の現状を知ってもらい、産業に対する理解を深めることで、産業の活性化を望んでいます。廃棄物処分場と一緒にしては失礼ですが、ナカダイの廃棄物処分場での体験は、廃棄物に対するイメージを変え、バスツアーもやって来る工場へと変化し、入社希望者が増えるという好循環を生み出しています。
最後に、和田さんの家の玄関に手書きで張ってあったので、ご紹介。これから夏休み、ぜひ体験してください。私は、知識(知る)+体験=経験と考えています。知った事実を自分で体験し、自分で解釈できたとき、初めてその人の貴重な経験となります。ネットで情報を見ているだけでは、“貴重な経験”は、手に入れることができません。ナカダイとくらぶちの群馬ツアーに足を運んでみてはいかがでしょうか。