サローネサテリテ・アワード 2025
長澤一樹/Super Rat「Utsuwa-Juhi Series」が受賞

「Utsuwa-Juhi Series」 長澤一樹(Super Rat)
©Ludovica Mangini/Salone del Mobile.Milano

イタリアで開催された、ミラノサローネ国際家具見本市の併催展、35歳以下のデザイナー・建築家または学生を対象としたサローネサテリテ・アワード2025は、受賞4作品を決定。第1位は、東京を拠点とするデザインスタジオ SUPER RATの長澤一樹による花瓶・容器「UTSUWA – JUHI SERIES」が受賞した。

今回は「NEW CRAFTSMANSHIP:A NEW WORLD(新しいクラフトマンシップ:新しい世界)」をテーマに作品を募集。現在と未来に必要とされる知性の形態を考察し、伝統工芸をどのように再解釈するかが問われた。

第1位に選ばれた長澤による「UTSUWA – JUHI SERIES」は、棕櫚(シュロ)の樹皮を主な素材に用いて、「柿渋染め」と呼ばれる伝統的な染色技法に、廃棄される鉄屑から抽出した「鉄媒染液」を掛け合わせることで、多様な造形を実現。日本の工芸の再解釈と環境への生産負荷の削減を目指した。

「Plissade」 Fenna van der Klei and Patricio Nusselder(Luis Marie)
©Ludovica Mangini/Salone del Mobile.Milano

第2位には、オランダのスタジオ ルイス・マリー(Luis Marie)によるテキスタイル・ディヴィジョン「プリサード(Plissade)」が選ばれた。結束具や接着剤を一切使わず、伝統的なプリーツ技法を再解釈した、自立可能なパーテーションで、円形に間仕切ることができるなど、テキスタイルを用いたホームオブジェの新たな可能性を提案した。

「Fil Rouge」Riccardo Toldo
©Ludovica Mangini/Salone del Mobile.Milano

第3位は、イタリアのリッカルド・トルド(Riccardo Toldo)によるウォールランプ「フィル・ルージュ(Fil Rouge)」が獲得。運命を結ぶとされる赤い糸からインスピレーションを得た作品は、直径1.8ミリの細長い照明でありながらも、最大1,200ルーメンという高い照度を提供する。

「Quibor Project」Juan Cortizo
©Ludovica Mangini/Salone del Mobile.Milano

特別賞に選ばれたのは、ベネズエラのフアン・コルティゾ(Juan Cortizo)による「Quibor Project」。コルティゾの工業デザインへの情熱とベネズエラの職人技が具現化したスピーカーで、表現力豊かで存在感のある生物的な外観からは、伝統工芸の新たな言語の可能性が見出された。

審査委員長を務めたパオラ・アントネッリ(MoMAシニアキュレーター、建築・デザインディレクター、研究開発担当)は、「クラフツマンシップは進歩に不可欠であり、人工知能や3Dプリンターが普及した現代においても極めて重要です。それは単に他の民族の物質文化を理解するための手段ではありません。それは何世紀にもわたって蓄積されたものであり、自然と生存に関する古代の知恵を含んでいます。さらに、素材や技術が真新しいものである場合、手作業で作る能力はイノベーションを推進するために不可欠です」と述べ、同アワードを締めくくった。End