we+が鋳物文化を探究した新作「Unseen Objects」
平和合⾦と共同でミラノデザインウィークに出展

Photos by Nik van der Giesen

デザインスタジオ we+は、富⼭県⾼岡市の鋳物メーカー 平和合⾦と共同でミラノデザインウィークに出展し、鋳造⽂化の魅⼒を探究する新作「Unseen Objects(アンシーン・ オブジェクツ)」を公開した。

江⼾時代から400年にわたり、銅器鋳造の中⼼地として発展してきた⾼岡市は、⽇本国内で唯⼀「銅器鋳造の伝統的⼯芸品産地」に指定されている。この地で1906年に創業した平和合⾦は、ブロンズ像、モニュメント、宗教美術品などの⼤型鋳造から、ロストワックス鋳造による繊細な⼩型彫刻、アート作品まで、長年にわたり培ってきた技術⼒と造形⼒を活かした鋳造を⾏う。

※ロストワックス鋳造:⼨法精度が⾼く、複雑な形状に適するロウを利⽤した鋳造⽅法の⼀種。

今回のプロジェクトでは、we+が平和合⾦のさまざまな鋳造プロセスを丁寧にリサーチ。⼯場のなかにある「⾒過ごされてきた魅⼒」に焦点を当て、「中⼦」「ゴム型」「砂型」「鋳砂」「バリ」「鉄棒」の6つの要素を作品として再解釈し、花瓶コレクション「Unseen Objects」を制作した。

中⼦(Casting Core)
鋳物の内部に空洞を作るために使⽤される砂型「中⼦」の柔らかく有機的な形状を作品として⽣かし、普段は⾒えない要素に新たな価値を与えている。

ゴム型(Rubber Mold for Lost Wax Casting)
ロストワックス鋳造に使⽤されるゴム型の機能的形状を精密に再現。実⽤のなかに宿る美にフォーカスしている。

砂型(Ceramic Mold for Lost Wax Casting)
通常の制作⼯程では壊される砂型を作品として保存。儚くも美しい瞬間を捉えている。

鋳砂(Sand Residue)
鋳造後の仕上げ⼯程できれいに取り除かれる鋳造砂を意図的に残すことで、⾦属と鋳造砂が融合した新たな鋳物製品の可能性を提⽰した。

バリ(Burr)
鋳造後の仕上げ⼯程で通常は取り除かれるバリを意図的に残し、偶発的に⽣まれる形状を作品として再構築した。

鉄棒(Iron Rods)
⼤型鋳物の砂型を固定するための鉄棒には、折れ曲がりや溶接痕が随所に⾒られる。その豊かな表情を作品として昇華した。

ミラノを拠点とするデザインキュレーター兼作家のマリア・クリスティーナ・ディデロ(Maria Cristina Didero)は同コレクションについて、「完璧さを追い求めるこの時代に、Unseen Objectsは静かに異議を唱えます。本作が⽬を向けるのは、製造過程における『ミス』や『残余物』です。例えば、鋳型の継ぎ⽬に⽣じるバリ、こびりついた砂、補強鉄棒の⼊り組んだ格⼦模様など、⻑らく⾒過ごされてきたものたち。美とは決して磨き上げられたものだけに宿るわけではありません。ひび割れの中に、残された痕跡の中に、そして⼿の跡が刻まれた不完全なかたちの中にも、美しさは静かに息づいているのです」と解説する。

⾼度な鋳造技術を作品へと昇華させた同展では、鋳物⽂化の価値を再発⾒・再定義すると同時に、鋳造⽂化の新たな魅⼒を世界に向けて発信している。End