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8時間前
Photos by Yann Audic
フランス国鉄(SNCF)は現在、超高速列車「TGV(テージェーヴェー)」の新型車両の開発を進めている。今回で5代目となる新型車両は、SNCFと鉄道車両の製造会社 アルストム(ALSTOM)が共同で開発。デザインは、佐藤オオキが率いるデザインオフィス nendoが手がける。
TGVは1981年に運行を開始した、フランス全域および国外の各都市を結ぶ超高速列車である。今回のプロジェクトは2018年に始動し、世界で唯一の最高時速300km以上で走行する2階建て車両をベースとしている。
自動車や飛行機とは異なり、鉄道はさまざまな地形に沿って線路の上を流れるように走行することから、コンセプトに「流れる川」を掲げた。
外観は、ウォームグレーをベースに白とグレーで「波」を抽象的に表現し、周辺の環境と柔らかく調和するデザインを採用。川の滑らかな「流れ」や「深度」、川底の柔らかな「小石」の形状、水面の「浮遊感」や「泡」などのモチーフを随所に取り入れている。
座席と車両内は、同じ高さに「水平線」のような色の分割線を設け、座席と空間の一体感を演出。座席のヘッドレストやランバーサポート、リーディングライト、コートフック、アシストグリップなどは、「小石」をイメージした柔らかなフォルムで統一した。
2階建ての車両は、各階を異なるコンセプトで設計。軽食や飲料を販売する1階の売店エリアは、客室車両内と同じく「水平線」を意識したカラーリングを施し、柔らかい形状のカウンターや棚は「浮遊」しているようなディテールに仕上げた。一方、2階のラウンジエリアは、「河原の小石」のように大きさの異なるベンチやクッションをさまざまな向きにランダムで配置し、一人でも複数人でも楽しめるスペースとした。
そのほか、照明は、折りたたみテーブルに干渉しない背が高いタイプ、バー車両用の背の低いタイプ、共用部の通路用の壁付けタイプの3種類があり、それぞれに共通のシェードを使用する。
流れる川をイメージしたディテールを積み重ねることにより、空間全体に居心地のよい柔らかさを創出した新しいTGVは、広い国土ゆえに長時間を要する列車の旅をさらに快適にしてくれるだろう。