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2025.01.14 17:02
全産業のなかでも特に環境負荷が高いと指摘されるファッション業界は、ここ数年で一気に構造的な転換を迫られたように見える。その一連の流れのなかで誕生したのが、いわゆる「サステナブル・ファッション」であるが、そもそもこの用語が何を指し示し、そしてこの潮流は今後どう進化していくのか。ファッションデザインを専門とする京都工芸繊維大学の水野大二郎教授の寄稿により、その歴史的経緯や未来の道程を考える。
エシカル・ファッションやエコ・ファッション、スロー・ファッションとも共振関係にある「サステナブル・ファッション」という言葉は何を意味するのか。
よく使われるにもかかわらずその定義は不明瞭であり、「持続可能性」という言葉の使用に管理も法的規制も世界的に認められた定義も存在しない。そのためブランドが曖昧で未検証のまま、自社の製品を「サステナブル・ファッションである」との主張を可能にしていることが課題であることを国連環境計画(UNEP、2023)も認識している。また、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)もSDGs一辺倒ではなく不確実性に対応するためのCRD(Climate Resilient Development、気候変動に強靭な開発)を提案するなど、開発抑制と促進の間で世界は揺れ動き続けているのが現状である。