特集
Fashion re:boot―サステナブルの先にある選択
数年前から押し寄せたサステナブルの波は、ファッションとデザインの関係を改めて問い直したと言っていいでしょう。どちらかと 言えば「デザインドリブン」のファッション領域にあって、その大量廃棄や環境負荷が問題視されるという事態は、従来型デザイン の限界を突きつけました。素材や生産工程の見直し、さらには雇用形態の適正化に至るまで、急速な刷新と浄化が今現在も進行 しています。一方で、型にはめられたサステナブル基準は、クリエイターの創造性や衣服の質をゆるやかに低下させているという 指摘もあります。今必要なのは、社会全体から突きつけられたサステナブルという課題をデザイナー視点から捉え直し、ファッショ ンの未来やよろこびに再接続させることかもしれません。こうした試みを続ける人たちやクリエイションを追いました。
Vol.231 | 2024年12月27日 発売 |
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定価: | 2,500円 |
表紙: | 黒河内真衣子 |
016
COVER STORY
黒河内真衣子
デビューから早14年。黒河内真衣子が手がけるMame Kurogouchiは、国内の産地と技術を深掘りして開発したテキスタイルを用い、その凝ったディテールと繊細な表現、さらに曲線の美しいフォルムを同時に生み出すことで、独自の世界をつくりだしている。現代的な新しさがありながら伝統的な懐の深さもあり、エレガンスも備える。まさに手を伸ばして、着てみたくなる服なのである。シーズンごとにテーマを決め、リサーチを重ねて、服に落とし込む。2025年のテーマは「Katachi(かたち)」。大事にしているのは日常の情景や自身の感覚というが、独自の世界はどのように構築されているのだろうか。そのデザイン視点を覗き見る。
032
デザイナーとアルゴリズムの協業 「一枚の布」から服づくりのプロセスを最適化する
一本の糸から一枚の布、一着の衣服へ。身に纏うことで身体と環境の間にある第二の皮膚となり、空間を彩る環境そのものにもなり得るプロダクト、衣服。「A Piece of Cloth(一枚の布)」から名づけられ、素材の基礎研究から生産に至るまで、異分野・異業種との協業によって服づくりの新しい仕組みを模索してきた「A-POC ABLE ISSEY MIYAKE(エイポック エイブル イッセイ ミヤケ)」がスペキュラティヴ・デザインラボラトリーSynflux(シンフラックス)と協業。アルゴリズムと人間の協働から見えた衣服づくりの未来とは。
038
ハーモニーが生み出す精神的なサステナビリティ OK-RMがGoldwin 0で目指したもの
「Goldwin 0(ゴールドウインゼロ)」は、カルチャー、循環型社会、そしてファッションの深いつながりを目指す、ゴールドウインによるプロジェクトだ。このディレクションを一任されたのは、英国を拠点に活躍するデザインスタジオのOK-RM。彼らは、視覚表現、音楽、空間、詩など、さまざまな領域のクリエイターとの協業によって、人と自然がともにある未来を構想する。創設者のオリバー・ナイトとローリー・マクグラスに、Goldwin 0のコンセプトのみならず、ファッションにおけるサステナビリティについて話を聞くべく、東ロンドンのスタジオを訪ねた。
044
素材から描く未来のファッションエコシステムとは
人工タンパク質が衣服の素材になるというのは、ひと昔前では完全な夢物語であった。しかし山形県のベンチャー企業であるスパイバー社が開発したブリュード・プロテイン™ファイバーは、まさに「夢の繊維」として、ここ数年世界から注目を集めている。今年も各ブランドが次々と採用する本素材は、ファッション産業の構造そのものを変革する可能性を秘めている。鶴岡市の本社を訪ねた。
050
サステナブル・ファッションはどこから来て、どこに向かうのか?
全産業のなかでも特に環境負荷が高いと指摘されるファッション業界は、ここ数年で一気に構造的な転換を迫られたように見える。その一連の流れのなかで誕生したのが、いわゆる「サステナブル・ファッション」であるが、そもそもこの用語が何を指し示し、そしてこの潮流は今後どう進化していくのか。ファッションデザインを専門とする京都工芸繊維大学の水野大二郎教授の寄稿により、その歴史的経緯や未来の道程を考える。
054
クリエイションとサステナブルの最適解を求めた最旬モード
アフリカ発信とだけ聞くと、カラフルで民族色豊かなファッションが思い浮かぶだろうか。しかし昨今のモードの世界で話題をさらっているのはそうしたものではない。よりコンセプチュアルなかたちでアフリカを体現しモード界で特異なポジションを獲得しているブランドがある。ヨーロッパのラグジュアリーブランドで経験を積んだのち、アフリカに戻り独立したボビー・コラドが手がける「ブジガヒル」だ。
059
「アーティスティック・ジャーナリズム」としての衣服とは 中里唯馬が問うオートクチュールの意味
生み出された衣服はどこへ行き、どうやってその役目を終えるのか— 。“ 衣服の終焉” にデザインの起点を置き、世界が注目する作品を生み出す中里唯馬は、日本人で唯一パリのオートクチュール・ウィークに公式ゲストデザイナーとして参加している。サステナビリティをデザインの主眼に置き、「アーティスティック・ジャーナリズム」としてのファッションを構想する中里に話を聞いた。
064
ルーツに向き合い精神的持続可能性を実現する coconogacco のファッション教育
ファッションデザイナーの山縣良和が主宰するプライベートスクール「coconogacco(ここのがっこう)」は、服飾の知識や技術を身につける学校ではない。ここで養うのは、「ファッションとは何か?」という問いを起点としたデザインクリエイション。その先は、精神的な持続可能性へとつながっている。発想と表現にフォーカスし、日本のファッション教育を再定義する山縣の思想とは。
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染織家が芸術教育の場に挑んだ革新 アルスシムラによる、自然美への畏敬の念と思想性
染織家、随筆家として知られる志村ふくみは、88歳を迎えた2013年、娘の洋子、孫の昌司とともに、開かれた芸術教育の場を目指して「アルスシムラ」を開設した。ここは技術だけを学ぶ学校ではない。自然と人間のつながり、手仕事の美しさ、それら思想や哲学に触れる場である。3人の言葉から持続可能性の先にあるものづくりを探る。
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第2特集
令和の水とデザインを考える
水は常に身の回りに存在する。そんな当たり前の事実が、水について考える機会を私たちから奪っているのかもしれません。その点でデザインは、日頃「見えていない水」を前景化し、水の視点で地域や人との関わりを見つめ直すなど、これまでも独特なアプローチを展開してきました。気候変動の影響はすでに私たちの実生活にまで及んでいますが、デザインの視点から水を考えることは、新たな美的価値の発見と同時に、地球環境の不確実性と向き合ううえでも大きなステップになるでしょう。最新プロダクトからグリーンインフラの新たな提案まで、本特集で水とデザインの価値を幅広く捉え直してみたいと思います
130
第2特集
ニューヨーク市民の手に公共の川を取り戻す+POOL
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第2特集
“ 雨水”を生かすレインスケープとは
140
第2特集
アップサイクルの美を追求するHONOKAの挑戦
144
第2特集
見えない水が呼び起こす不確実さと流動性—毛利悠子作品と水
150
第2特集
「感性で環境を捉える」ウォーター・コーリング
156
第2特集
「山水郷のデザイン」を語る 藤崎圭一郎×井上岳一
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第2特集
we+ が目指す、コンテンポラリーデザインの美学
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第2特集
シンガポールのWOHAが掲げる、生命体としての建築
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Ambience 気配
チェン・ウェイ(陳 維)
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LEADERS
竹村眞一(文化人類学者)
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Global Creators Labs
ギンコ・バイオワークス
092
Sci-Tech File
毒がどう効く? 何に効く? 分子から解き明かす寄生バチの毒
098
ひとつのピースから
Pak Awang Sofa (1960s)
102
アフリカの実践者たち
ジョモ・タリク(家具デザイナー)
108
EYES ON K-DESIGN
SEOUL DESIGN 2024
162
深津貴之の「行ったり来たり」記
3Dプリント建築
168
意思決定のデザイン
共通の思いを育むリサーチ
172
太古のクリエイティビティ
無限の物差
178
詩的工学演習
まだ意味のない機械
180
視点モノローグ
妥協
182
クリエイターズナビ
アダム・ナサニエル・ファーマン、中内淳太、都 淳朗、ナタリア・クリアド、
Studio ThusThat、杉戸 洋
188
はじまりのはじまり
動画に落書き
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