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2024.12.23 11:30
北中米を代表するサッカーの強豪国・メキシコ。同国でもっとも長い歴史をもつサッカーチームのひとつが、中部の大都市グアダラハラに拠点を置く1916年創設の「アトラスFC」だ。同チームはこのほど、新しいトレーニング施設の建設を行った。
設計を手がけたのは、メキシコシティをベースとする建築設計事務所 ソルド・マダレーノ(Sordo Madaleno)。サッカーはこの国でもっとも人気のあるスポーツのひとつだ。地元で採取される素材を活用し、伝統的な建設手法を取り入れながら、大学のキャンパスのような、若者であふれる活気に満ちたスポーツの施設が出来上がった。
約7ヘクタールの「Academia Atlas」と呼ばれる同施設は、プロサッカーコート6面を備えるほか、クラブハウス、応用スポーツ科学センター、管理オフィスなどを併設し、厳しい条件下でプレーする若手選手に宿泊施設や整った環境を提供する。
建物は、8.4×8.4mのグリッド状のモジュラーシステムによって構成されている。屋内空間は、クラブの今後の展望に合わせて柔軟に変更・拡張することが可能だ。一方、オープンエアの部分は柱と梁の構造で構成され、メキシコの強い太陽光を除ける縞状の屋根として機能する。
また、床面積8,300㎡の長方形の建物エリアは、日陰の通路が配置されており、プライベートな中庭や小さな町の広場のような憩いの場となっている。脇にある屋外階段は、内外の流動性を確保し、強いつながりを生み出している。
西側のファサードに沿った階段状の観客席もまた、施設とピッチのつながりを演出する。試合のないとき、選手はこの階段を使ってウォームアップをし、瞑想エリアやリラックスする場所としても利用できる。試合が始まれば、家族や友人、一般の観衆が集まり応援する、にぎやかな場所へと変わる。
建物の全体を覆う赤い色は、チームのアイデンティティを象徴している。レンガは伝統的なメキシコの工法だが、この施設のための赤レンガは特別にデザイン・発注された。その結果、建設過程で出る廃棄物を大幅に削減することも可能になった。
ランドスケープデザインには、地域の固有種の植物のみを採用し、年間を通して、いつも植物が生い茂っているのを楽しむことができる。それだけでなく地生の植物は、植栽の管理や水の消費を抑えられる。たくさんの植物が建物をつたって伸びることで、力強いアイデンティティを放つ地元のランドマークになるだろう。