滋賀県立美術館は、開館40周年記念展覧会「BUTSUDORI ブツドリ：モノをめぐる写真表現」を2025年1月18日（土）から3月23日（日）まで開催する。

島 霞谷《鮎》1860年代 個人蔵（群馬県立歴史博物館寄託）群馬県指定重要文化財

タイトルにある「ブツドリ（物撮り）」とは、商業広告などで商品（モノ）を撮影することを指す言葉。この「ブツドリ」をより広く捉えてみると、「物を撮る」という写真史のなかで連綿と続いてきた重要な表現の一形式であることがわかる。

ふと目にとまった日常の「モノ」にレンズを向けることは、誰しもが経験したことのある行為だ。現代ではカメラだけでなく、スマートフォンでも自在に撮影できるようになり、さらにはSNSの普及もあって、「モノ」を撮影した写真で溢れる時代となった。

小川一眞《唐招提寺 破損仏・鼓楼》1888年 東京都写真美術館蔵

高山正隆《静物》1920-1929年 東京都写真美術館蔵

　
そこで同展では、重要文化財である明治期の写真原板から、文化財写真、静物写真、広告写真、そして現代アーティストの作品まで、「モノ」を撮影した200点以上の多種多様な写真作品を展示。これらを「ブツドリ」という言葉で捉え直しながら、日本における豊かな写真表現の一断面を紹介する。

安井仲治《斧と鎌》1931年 東京都写真美術館蔵

撮影：ホンマタカシ 『物物』2012年刊行 猪熊コレクションより

山沢 栄子《物体》1986年 東京都写真美術館蔵 ©YAMAZAWA Eiko

「たんなるモノ」以上の豊かさをもつ標本写真、仏像写真や文化財写真、1920～1930年代の静物写真、中山岩太や安井仲治らの前衛的な写真表現、ポスターなどの広告にみられるモノのグラフィック表現、ホンマタカシが猪熊弦一郎のアンティークコレクションを撮影した「物物」プロジェクト、そして、坂田 稔や恩地孝四郎、山沢栄子、鈴木 崇といったモノの「かたち」に着目した写真家の作品など、同展では私たちにとって身近な「ブツドリ」の奥深さを堪能することができるだろう。