アウトドアが与える新たな食の視点

アウトドア活動は自然を満喫するものであり、そのなかで食もまたひとつの工夫を要する楽しみである。今回は新たに登場した山飯ブランド「マウンテン グルメ ラボ」、自然と向き合うアウトドア料理家・蓮池陽子、そしてアウトドアメーカーの食部門「パタゴニア プロビジョンズ」に話を聞き、アウトドアと食の関わりの面白さと奥深さを探る。

DCF(ダイニーマ・コンポジット・ファブリック)の透け感のある生地により、周囲の自然環境をより肌で感じることができる「エレメンタル1」。

山を美食の舞台にするシェフのレシピとドライ技術

アウトドア食の代表格と言えば、キャンプ飯と山飯(トレイルフードや登山食)だが、このふたつは近しいようでかなり違う。

包丁やまな板、ガスコンロや焚き火台、人によってはスキレットやダッチオーブンまで持参するキャンプ飯は、屋外調理の躍動感や爽快感に醍醐味がある。それ自体を目的とする人も多い。対する山飯は、最小限の装備と調理でお腹を満たし、栄養を摂取する食事。長時間行動のためのエネルギーを補給し、モチベーションを上げる意味で、重要度はキャンプ飯以上かもしれない。にもかかわらず、過酷な制約が伴う。人が背負える量には限りがあるから、軽くてコンパクトでなければならない。肉体の疲労を考えれば、簡単かつ短時間で調理できたほうがいい。水もエネルギーも少なくてすむほうがいい。加えて、腐らないこと、ゴミが出ないよう食べ残しのないジャストの分量……。そんなこんなで、主としてアルファ米やインスタントラーメン、フリーズドライ食品などが利用されてきた。

「どこか諦めているところがあったように思う」と語るのは、昨年9月にリリースされた山飯ブランド「マウンテン グルメ ラボ」のプロジェクトオーナー、三好拓朗さんだ。