建築家がつくる山岳テント
「マウンテン・ギア・プロジェクト」

建築家の三木真平と黒田美知子が立ち上げたテントブランドがある。そのテントは独自技術の接着によって完成する。だからこそ軽量で透明感にもあふれている。自然と深く向き合うことで得られるリアリティにこそ、今の建築家に必要なものがあるのではないかと彼らは語った。

DCF(ダイニーマ・コンポジット・ファブリック)の透け感のある生地により、周囲の自然環境をより肌で感じることができる「エレメンタル1」。

出発点はアートワークとしてのテント

「小さい頃から家族でアウトドアに親しみ、少年時代は釣りに没頭していました」と語るのは建築家の三木真平。ルアーを削り、いかに自らの感覚を魚に近づけることができるか、その試行錯誤が「自然と一体化する原体験」となった。

大学生の頃に同じく建築を学ぶ黒田美知子を誘って山登りに行くようになる。ユニットで応募した建築コンペに優勝したことをきっかけに、2013年建築事務所mikikurota(ミキクロタ)を設立。同じ時期に、もうひとつの活動として「マウンテン・ギア・プロジェクト」を立ち上げ、アートワークとしてのテント制作を始めた。

最初の作品「ステラリッジ・ゴースト」は、三木が使っていたモンベルのソロテント「ステラリッジ」のフレームを流用し、高密ポリエチレン繊維不織布のタイベックを幕(フライシート)にして、ふたり用のテントに改造したもの。黄色や赤などカラフルなテントが並ぶサイトに出現した真っ白なテントは異彩を放ち、話題を呼んだ。