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2024.10.24 15:29
21世紀のサグダラファミリアと言われる横浜駅に限らず、乗降客が集中する大都市のターミナルはどこも拡張・改修工事がさかんだ。オーストリア最大の公共交通プロジェクトとされるシドニーメトロのシティー&サウスウエスト線の一部が今年8月19日に開通し、オーストラリアでもっとも交通量の多い駅であるシドニー中央駅が改築された。また急速に発展している郊外の街ウォータールーには新駅が誕生した。
ウォータールー駅はロンドンに拠点を置く建築設計事務所John McAslan +Partners(ジョン・マクスラン+パートナーズ)が、またシドニー中央駅は、同じくJohn McAslan +Partners がオーストラリアのWoods Bagot(ウッズ・バゴット)社とともに設計を担当している。このふたつの駅を見ていこう。
シドニー中央駅
シドニー中央駅は1906年から21年にかけて段階的に完成した歴史的な駅だ。その後数多くの拡張工事が行われ、統一性のないちぐはぐ状態にあった。今回の改築で、20世紀初頭に建てられた堂々とした建物を活かしながらも、ばらばらの要素が再構築されわかりやすい動線が出現した。中央口の中心には特徴的な50メートルスパンのアーチ形天井が組み込まれている。
ウォータールー駅
一方郊外のウォータールー駅周辺は、近年ビジネス街として発展を遂げ、地下鉄の開業とともに駅周辺の再開発も行われている。こうした地上と地下の大規模な開発に対して、ジョン・マクスラン+パートナーズは「過去は大地にあり、未来は空にある(The past is in the earth, the future in the sky)」という先住民の教えにヒントを得て駅をデザインした。
駅の利用者を出迎えるのは、アーティストのNicole Monksが手がけた、この地区の先住民族「ガディガル族」の足跡を称えるアート作品群。ひときわ目を引く、高さ約10mの人物像は、先住民の少年のダンサーを描いたもの。エスカレーターの壁面に施されたアルミニウム製の無数の足跡は、先住民が散歩道や重要な場所を表現していた地図である。
コンコースにある大きな壁面は、シドニーの砂岩の堆積層をイメージしており、オーストラリアの「大地」を感じさせる。さらに、ブロンズカラーの金属製の壁面には、現地で発見された古代のシルクリート(オーストラリアの礫岩)製の石器片や、この国固有の植物「バンクシア」が細やかにあしらわれている。
地上のファサードのデザインは、近隣の産業エリアの建築を再解釈したものだ。また、南側駅舎には、アルミニウム製のファサードに先住民の生活を支えてきた湿地帯がモチーフとして描かれており、ウォータールーの新しいランドマークにもなっている。
このプロジェクトは今尚、現在進行中で、2030年には、シドニーには4本の地下鉄路線と46の新駅、113キロメートルに及ぶ地下鉄システムが完成する予定だ。