「青木淳と三嶋りつ惠 光のあいだ」展に見るギャラリー空間

今年9月、東京・世田谷区三宿にオープンしたシューゴアーツ ウィークエンドギャラリーで、建築家の青木 淳とガラスアーティスト三嶋りつ惠の展覧会が開催されている。

▲「MISHUKU LIGHT」
青木 淳氏は、アートワークのための空間に置かれるため、モノとして存在を主張しないスタンドを心掛けたという。ギャラリーの広さを照らすのに十分な光を確保するために、逆算してスタンドの数も決められた。


ふたり展というよりは、青木 淳氏が設計したギャラリー空間、そして照明、家具に呼応するようにヴェネチア在住のガラスアーティスト三嶋りつ惠氏がガラス作品を展示するという趣向。

道路から階段を下りて、サンクンガーデンのような地下に面したウィークエンドギャラリーは、ギャラリー空間としてはとても珍しいデザインになっている。展示壁は左右向かい合わせの2面のみで、入口と奥は全面ガラス張り。日光からの影響を受けないように、四方を白壁で閉じた一般的なギャラリー空間と異なり、地上から差し込む自然光が室内に入り込む。

ギャラリーの床も整えられたコンクリートではなく地のまま。設計した青木 淳氏はホワイトキューブのように美術を展示するための受け皿を用意した、とお膳立てするのではなく、未完成のような空間にさまざまなアーティストの作品が入ることで、空間が毎回変化していくことを望んだそうだ。

むき出しのコンクリート床やガラス壁によって、屋外と屋内がつながるような雰囲気を打ち出しているギャラリーにさらにアクセントを与えているのが、ギャラリーのために青木氏がデザインしたスタンド型照明器具「MISHUKU LIGHT」。空間内の天井、壁には照明器具を取り付けておらず、明かりはこの照明器具のみ。街路灯と同じ300WのハイパワーLED光が天井に反射して周囲を包むことで、夕暮れ時の戸外にいるような不思議な感覚を覚える。

インダストリアルで直線的な青木 淳氏の手がけた空間に、ひとつひとつ手吹きによるうねるような三嶋りつ惠のガラス作品が入ることで生まれるコントラストとハーモニーをぜひ体感してもらいたい。夕暮れ時の訪問をお勧めする。(文・写真/長谷川香苗)

▲「MISHUKU TABLE」
長さ280cmの楕円テーブルもギャラリーのためにデザインしたもの。ヴェネチアで活動するガラスアーティストの三嶋りつ惠氏は、このテーブルを水面に見立てて新作をつくった。

▲「MISHUKU STOOL」
青木 淳氏によるスツール。ギャラリー空間は長方形の印象が強いため、それを中和するためにスツールのシルエットは折れ曲がっていることが大切だという。細く肉厚の薄いパイプを脚に使うことで、わずかながらもスツールにクッション性が備わっている。


青木淳|三嶋りつ惠 光のあいだ展

会 期 2015年10月31日(土)〜12月13日(日)
    毎土曜・日曜 正午より午後6時まで

会 場 シュウゴアーツ ウィークエンドギャラリー
    東京都世田谷区池尻2-7-12 B1F
    http://shugoarts.com