今でも地方では子どもたちが自由に遊べるスペースが残っているものと思うが、都会やその周辺地域では子どもの歓声すらも騒音扱いされて、ほとんどの公園でさまざまな運動が規制されることが当たり前になってしまった。
また、箱ブランコやグローブジャングル(回転する球形のジャングルジム)もはさまったり、手を離すと危険(それはそうだ)といった理由から撤去されている。
しかし、同時に、そうした運動体験から遠ざけられた子どもたちが被る、身体能力や平衡感覚に関するマイナス面も考えるべきだ。
本来であれば、屋外で自然の地形や樹木などを利用し、勝手に工夫して遊ばせるのがいちばんであろうし、指導員を置いたうえで子どもが廃材や各種の道具を使って遊びを創造できる東京・世田谷の「羽根木プレーパーク」のような冒険遊び場もつくられているが、それに近い体験が得られる場を商業施設内に設けた好例が、大阪のなんばパークスの「Kodomonia!(こどもにあ!)」(http://www.halos.co.jp/kodomonia)だ。
株式会社ハローズが運営するKodomonia!は、デザイン性の優れた育児グッズやペット用品の企画・輸入・販売を行っている株式会社ダッドウェイがプロデュース。瀬戸けいた・なおよ夫妻が自然や生き物の進化をテーマに展開するデザインレーベル「セト」が、コンセプトデザインから設計・グラフィック監修(クリエイティブディレクション)、ワークショップ企画などを手がけて誕生した。
子ども料金が30分600円、平日フリーパスや土日2時間パックで1,200円という有料施設だが、同伴の大人はすべて300円という料金体系が、遊び場としての性格を物語る。
その各コーナー名は、「やまやま」「あなあな」「かきかき」「ぺたぺた」など、自然界の事物や、そこでできる遊びから名付けられ、ランダムな形状や配置の面白さを生かした遊具が設えられている。
なかでもシンボル的な存在の「やまやま」は、高さも傾斜も表面素材や触感も異なるさまざまな起伏から構成され、ときにはバランスを崩す子どももいるが、妙に安全性ばかりに気を遣って個性を失った遊具とは一線を画する楽しさに満ちている。
例えば、ここから発展して、幼稚園などにもこのような遊び場が設けられるようになっていけば、日本の子どもたちの身体能力は無意識のうちに以前の水準に戻っていくことができるのではないか? そういう可能性を秘めたアイデアが、ここにはたくさん詰まっていると感じた。