顧客との「6分間」で、持続的な価値を創出するために

この記事は、frogが運営するデザインジャーナル「Design Mind」に掲載されたコンテンツを、電通BXクリエーティブセンター、岡田憲明氏の監修でお届けします。


顧客からの問い合わせに対応する「コンタクトセンター」。顧客と接する時間が継続するのは、平均で6分間です。スタッフとプロセス、テクノロジーを効率的に編成して、その時間を特別なものにしましょう。

コンタクトセンターにこそ、
「特別な顧客体験」を提供するチャンスがある

コンタクトセンターの存在は見過ごされがちですが、どの組織でも、サービスと顧客体験の構造において極めて重要な要素です。活気に満ちたこの一室こそ、スタッフ、プロセス、テクノロジーが一体となって顧客と一対一でつながることができる場所です。世の中の組織はこの「一対一で顧客とつながる場所」のために、マーケティング活動に何億円も費やしています。

従来、企業はコンタクトセンターをコスト重視、テクノロジー第一の短期的な視点で見ていました。しかし、このアプローチでは長期的な成果を生み出すことはできません。持続的な価値を実現しようとするなら、顧客と直接やりとりをしてサービスを提供するこの機会を最優先することがとても重要です。最終的には、売り上げと最終損益の向上につながる 顧客体験を目指す必要があります。

今こそ、見返り重視、コスト重視の発想はやめて、人間関係を最優先する考え方を養うときです。顧客に対して丁寧に接するのは当然ですが、それだけでは不十分です。最大限の総体的な価値をもたらす顧客体験を提供しなければなりません。目標は、最適な顧客体験と最適なコストのバランスをとることです。

この目標は、顧客の信頼を獲得し、コミュニケーションを取りやすくすることで達成できます。誰もが顧客の注目を集めようと競い合う現代において、顧客体験は、多くの業界にとって企業が差別化できる最後のポイントです。企業は、コンタクトセンターでの顧客接点を変革し、その名にふさわしい場所、つまり特別な体験の拠点にまで高めるのが賢明です。

顧客と接する時間は常に顧客を中心に考え、スタッフ、プロセス、テクノロジーを結集してシームレスなサービスを提供することで、最大限の総体的価値を実現しましょう。

顧客体験を台無しにする原因とは?

多くの顧客にとって、企業に問い合わせをしなくてはならないというのは気が重いものです。まるで迷路のような自動音声メニューをやっと抜けたと思ったら、生年月日や郵便番号などを入力させられ、何秒か後に出てきたオペレーターにまた同じことを聞かれるといった調子。

おそらくは「遅いシステム」のせいで、電話の向こうからわざとらしい謝罪の言葉が延々と繰り返されることも。そんな事態を避けようとチャットで問い合わせてみると、会話が途中で途切れたり、どちらにしても電話をしなくてはならないことがわかったり……。顧客はうんざりするうえに、誰にとってもいいことはありません。

皮肉なことに、短期的な「ギリギリ」のコスト最適化を追求すると、長期的なコストは高くなります。普段は穏やかな顧客が、絶望感のあまり怒りをあらわにするのも当然です。その怒りはSNSで発信され、オペレーターとふたりだけの会話の場を、何百万人もが声を上げる公的なものに変えてしまうでしょう。あるいは、さっさと他社に乗り換え、友人に「あの会社のサービスを利用するのはやめろ」と勧めるかもしれません。

これでは特別な体験が聞いてあきれます。顧客に収まることのない怒りを与え、やりとり全体を台無しにしかねないポイントが、顧客対応プロセスのあちこちに潜んでいることを痛感させられる話です。

米調査会社フォレスターが発行する「ザ・フォレスター・ウェーブ™:顧客体験戦略コンサルティング業 2022年第4四半期」において、frogブランドの親会社キャップジェミニは、顧客体験戦略の「リーダー」に認定されました。(詳しくはこちら

サービスデザインの専門性と顧客体験デザインに関する詳細な知識を兼ね備えたfrogは、
クライアントと連携しながら第一級のコンタクトセンター変革ソリューションを提供することができます。クライアントには、自社のビジョンと目標に応じた、適切な機能を備えたサービスの構築を確信していただけるはずです。

本来の目的と役割を見失うなかれ

平均的な顧客対応と役員による意思決定の間のギャップは大きいものです。アマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏が同社の役員30人が集まった会議の最中に、「アマゾンはすべての問い合わせ電話に1分以内に出る」という、あるリーダーの主張を検証するため、アマゾン・コンタクトセンターに自ら電話をかけたというのは有名な話です。4分半が過ぎると、ベゾス氏は烈火のごとく怒ったそうです。

経営陣による介入は変革への強い後押しになり得ますが、大抵の役員はむしろ、取締役会で問題が報告され、対応を求められるようなことがない体制を望むでしょう。コンタクトセンターの最大の目的は、顧客に寄り添って信頼を醸成し、関係性を深め、良い印象を与えて喜んでもらう機会を創出することです。ところが現実には、プロセスの決定や従業員減少への対策、ベンダーとの交渉などの「舞台裏」を整える業務に日々追われ、役員の関心もそうした面に集中します。そのため、センターの本来の目的は忘れられがちです。

顧客とのやりとりは、後から手直しすることはできません。十分な情報とデータに基づいて、賢く設計しておくことが必要になります。ひとつひとつの意思決定が、その瞬間に影響します。顧客とやりとりする一度の機会が、顧客を引き留め、その体験を最適化しようとするブランド全体にとって極めて重要なタッチポイント(接点)となります。ほんのいくつか(例えたったひとつでも)不愉快なことが起きれば、収益が不意になりかねないのです。

frogでは、コンタクトセンターでのやりとりを会話の機会と考えています。しかし現実には、こうしたサービスの機会は非効率だらけなのが現状です。では、どのような対策をとればいいのでしょうか?

顧客体験中心のコンタクトセンターをつくる3つのステップ

顧客の抱える問題を解決し、その体験をより良いものにすることを第一に考えるなら、企業は経費の優先順位と成長戦略を考え直し、コンタクトセンターを顧客が楽しめる場にしなければなりません。コンタクトセンターでの体験は、綿密に構築され、大切に考えられる必要があるのです。

企業は、顧客を妨害し、その体験を台無しにするポイントの根底には何があるのかを理解しなければなりません。ここで、コンタクトセンターの改革に乗り出す組織の皆さまのために、改革を進めるための3つのステップを紹介しましょう。これまではコストの検討が最優先され、顧客の不安はないがしろにされてきました。これからは、総体的価値の最大化が成功のカギとなります。

1.サービス機会の構成を分析する
まずは、望ましい結果を思い描きましょう。個々のサービス機会の構成を読み解き、典型的なやりとりはどのようなものかを把握します。その構成を検証して、「効率」と「体験の価値」がどちらも最大限に高まる最適な対応の仕方を見極めます。それを手引きとして参照しながら、スタッフ、プロセス、テクノロジーの配置を決めていきます。本当の意味で大切な瞬間を創出するチャンスを探しましょう。

2.「総体的価値」を最大化する
ここでの「総体的価値」とは、企業側のコンタクトセンターへの投資を最大限に生かしながら、顧客と従業員双方の体験をより良いものにするサービスを指します。顧客はセグメントごとに異なることを期待しているかもしれませんが、どの顧客も一人ひとりが重要な存在です。また従業員には、自分が大切にされていて、適切な方法で顧客に対応する権限が与えられていると感じてもらう必要があります。従業員の体験は、顧客満足度と密接に関連しているのです。
先行投資と、サービス単位および従業員ひとり当たりのコスト、そして顧客満足度のバランスを検証し、顧客サービスが最大限の効果を生むように、限られたリソースを配置しましょう。

3.体験の「ハブ」を構築する
frogでは、コンタクトセンターを「体験ハブ」として再定義しようとしています。体験ハブとは、複数のチャネルを通じたすべてのサービス上のやりとりと顧客対応を管理する企業の中核拠点です。この体験ハブによって大規模な持続的変化が可能になり、周期的に上下するのが標準といえる「コンタクトセンターの投資利益率曲線」が、上向きに変化します。そのためには、サービス上のやりとりをひとつひとつ検証したうえで、顧客と従業員の体験を最優先に考えながら、テクノロジーを活用するとともに運営上の整合性のとれた顧客対応機会を構築することが必要になります。

コンタクトセンター改革に投資するなら、今

例えば、コンタクトセンターを体験ハブに変容させ、組織全体に持続的な価値を創出し、誰にとっても特別な体験を実現するための機能の導入を考えてみませんか? 
frogは、クライアントの皆さまがこれを実現できるようにサポートします。

目の肥えた顧客はサービスに対する期待が高く、卓越した顧客体験を求めることから、コンタクトセンターは改革戦略における重要な課題となっています。現在のビジネス環境においては、テクノロジーを活用した体験重視の機能への変革が、投資利益率の維持につながります。

私たちfrogは、エンジニアリングとテクノロジーに、市場に並ぶ者のいない 世界トップクラスのデザイン思考を組み合わせて、クライアントの皆さまを支援することができます。

コンタクトセンター改革戦略の一環として、サービス変革とコスト削減、収益増加を実現したいとお考えであれば、ぜひfrogにお申し付けください。私たちにはその実績があります。frogは皆さまとともにテクノロジー活用と変革に取り組むビジネスパートナーとして、プロジェクト全体にわたってあらゆる領域の価値を実現します。顧客体験デザインに関する当社のサービスの詳細については、こちらのレポートをダウンロードしてご覧ください。