「windows ♯1」2022年 （アーカイバル・ピグメント・プリント）
Photo by Yoshiyuki Okuyama

写真家・奥山由之の個展「windows」が、2023年7月8日（土）まで、東京・六本木のamanaTIGPにて開催中である。

2011年のデビュー以来、あらゆる事象に付随する矛盾や多面性を創作テーマとし、切り取った瞬間の前後に揺らめく無数の可能性を写真の本質と考えて、独自の視覚表現を実践してきた奥山。2020年に発表した「人物以外の被写体を通して人を描く」3部作の1作目「flowers」では、花を媒介として亡き祖母との対話を試みた。

これに続く「windows」は、コロナ禍の約2年半にわたって東京の住宅の不透明な窓を捉えた約10万枚の膨大な作品で構成され、同展ではそのうち約25点を展示している。

東京は世界有数の住宅過密地域であり、そこにある多くの窓はすりガラスや型版ガラス、フロストガラスといった不透明なガラス窓である。このスクリーンは、閉ざされた内なる空間から見れば、外の景色を伝える風景画になり、外側の世界から見れば、無機質で四角い枠の奥に住む人々の生活を描く肖像画にもなる。

また、日用品や雑多なものの数々とそこに息づく人々の生活は、不透明なガラス越しに抽象化され、情報化・言語化されることのない不安定なうねりのような、見知らぬ誰かの内面の投影のようにも感じられる。

奥山は同作品について「入り組んだ文化のレイヤーを持ち、建物がひしめきあう東京において、ある種のシンボルとも言える不透明な窓に、私は人々の表情を見た。窓を見つめることは、見知らぬ誰かと見つめ合うことに等しいと感じた。この静かな視線の行き交いが『東京』という街で生きる人々の肖像画になり得る」のだと解説する。

また奥山は、窓が「『人』ひとりひとりと『社会』をつなぐ“結節点”としての役割も担っているように思える」とも語る。この展示は、小さくて混沌とした東京という街の様相を体現した疑似空間にもなっている。