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2023.05.09 18:40
久しぶりに活気に満ちた今年のゴールデンウィーク。八十八夜である5月2日に、静岡県で東アジア文化都市2023の春の式典と「天守物語」の上演が行われた。
「東アジア文化都市」とは、文化庁が設定した「日中韓文化大臣会合での合意に基づき,日本・中国・韓国の3か国において,文化芸術による発展を目指す都市を選定し,その都市において,現代の芸術文化や伝統文化,また多彩な生活文化に関連するさまざまな文化芸術イベントなどを実施するもの」という事業である。
川勝静岡県知事のスピーチにあった「オリンピックなどと同じ、戦争をしないための芸術・文化による平和の砦。文化首都が集まり、お互いの個性を楽しむプロジェクト」という説明がわかりやすいだろう。
東アジア都市は今年10年目の節目を迎える。2014年の横浜から始まり、新潟、奈良、京都、金沢、東京都豊島区、北九州、大分、そして今年、世界文化遺産登録10周年を迎える富士山のある静岡が選ばれた。中国からは成都と梅州、韓国は全州という計4都市である。
四川省の省都であり、古くは三国志の舞台であった蜀漢の成都市と、客家語を使う人が多く住む梅州市、また全羅北道にある、後百済の都であった全州市といった、長い歴史を持ちながらも首都とはまた違う文化を受け継いできた都市が選ばれていることが興味深い。
静岡県コンベンションアーツセンター・グランシップ中ホールで、来賓の挨拶や各都市を紹介する映像が流れたあと、中国の成都からはパンダ雑劇芸術団の国宝熊猫という、大きなバンダの頭をつけて演じる雑劇、梅州からは広東漢劇伝承研究院の「南国牡丹の香り」が上映された。
その後韓国・全州市は、伝統楽器を演奏しながら、大旗や頭につけたリボンをまわして舞台いっぱいに演じる迫力の民族芸能を披露。佐藤典子舞踏団による現代舞踊のフィーナーレで春の式典は幕を閉じたが、場所を移して静岡は、泉 鏡花原作、宮城 聰演出の姫路城を舞台とした「天守物語」を特別公演した。
駿府城は日本一の天守台を誇るだけあって、内堀の中だけでも歩いてみるとその広さに驚かされる。その一角にある紅葉山庭園前広場に設けられた舞台で、「天守物語」は野外公演された。
八十八夜のこの日はまだ寒さが残っていたが、十三夜の白い月と、照明のもとに飛ぶユスリカという春の宵ならではの自然環境が、この世のものならぬものたちが繰り広げる幻想的な世界にふさわしい演出の一翼を担った。
アテネを緒とする「欧州文化首都」をモデルに発足したという東アジア文化都市。生活文化を楽しむ気運が、日本そして東アジアの諸都市にもこれからますます根付いていくことを望みたい。
尚、このふじのくに野外芸術フェスタ2023「天守物語」は5月27日(土)、28日(日)に、やはりお城である浜松城公園でも公演予定。また今年、年間を通じて、静岡県内では、県内各地を「庭園」のような「劇場」に見立てて、さまざまなイベントが500本以上が開催される。今後のイベント情報はこちらから。(文/AXIS 辻村亮子)