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2022.06.30 17:00
昨今、官民連携事業などにより、公園や広場、文化施設などの屋外空間の活用が広がり、その使われ方が多様化している。そうした施設では、いかに人が集いやすい空間をつくり、にぎわいを創出できるかがが重要な要素の一つとなっている。そこで、人に寄り添う照明と空間づくりを追究するパナソニック エレクトリックワークス社では、この6月に「llumiro(ルミロ)」を発売した。ゆっくりと眺めていたくなる光をコンセプトに、人が心地良く過ごせる上質な空間を創出する屋外照明である。開発に携わった同社の林 拓弥と城寳俊亮に、製品誕生の背景をはじめ、今後の活用の可能性について聞いた。
人に寄り添う照明と空間づくりに取り組む
パナソニック エレクトリックワークス社では、人に寄り添う照明と、その空間づくりに取り組み、先進的な素材や技術を用いた建築照明シリーズ「SmartArchi(スマートアーキ)」などを展開。2020年に発売した屋外照明「Broad Washer(ブロードウォッシャー)」もそのひとつだ。独自の導光技術 (光を任意の方向に反射・屈折させる技術)を駆使して、広範囲を明るく均一に照らしながら、上方向への光を抑制してまぶしく感じにくい配光設計を行い、人にやさしい屋外照明を実現した。
また、同社では、照明器具のプロダクトデザインに留まらず、光の波長や波形、特性、人の感じ方などを研究し、心地よいと感じる空間づくりを考えてきた。2021年に発表した「アフォーダンスライティング」は、歩行速度に近い光の流れで、楽しく歩みを進めたくなるような「回遊」の演出や、呼吸のように優しく繰り返す明滅で、人が集まる場所を心地良くなるような「滞留」の演出などを提案する。
「新たな価値をもった照明」をめざして
「llumiro(ルミロ)」の開発のきっかけは、新たな屋外照明のニーズを感じたことだった。官民連携事業(PFI)による公園の開発やまちづくり計画などの路上利用の緩和、民間事業者によるオープンスペース(公開空地)の利用によって、屋外空間の活用が増え、その使われ方が多様化している。アフターコロナの経済活動の活性化に向けては、文化施設や娯楽施設の夜間活動(ナイトタイムエコノミー)の推進も期待されており、人が集い、長く滞在する心地良い場づくりが重視されている。
「llumiro(ルミロ)」の企画を担当した林 拓弥は、「屋外照明の役割には、街路灯のように周囲を均一に明るく照らして安心・安全な歩行環境をつくることや、外構や植栽を演出して景観の向上を図ること、娯楽施設やイベントのための感動や発見をもたらす演出などがありますが、多様化する屋外空間に向けて、人の滞在を促すためのもうひとつの『新たな価値をもった照明』の必要性を感じました」と話す。そこで自社の技術や研究ノウハウをもとに、「SmartArchi(スマートアーキ)」の新製品として、「llumiro(ルミロ)」」の開発がスタートした。
「llumiro(ルミロ)」のデザインを手がけた城寳俊亮は、「人にとって心地良い光は何かと考え、昔ながらのオイルランプが放つ温かみのある明かりに着目しました。その照明のそばで休憩したり、会話を楽しんだり、夜の街を過ごす時間が心地良いものになるように、ゆっくりと眺めていたくなる情緒的な表情をもつ光をめざしました」と語る。
造形は、オイルランプをモチーフに、透明な筒の中に円柱形の「導光ロッド」(アクリル製の無垢の棒)が光る、2層の構造から成る。デザインは、装飾的な要素をそぎ落とすことで、景観に調和させながら光だけを象徴的に魅せることを考えた。
独自の技術と設計により、4種類の光をデザイン
「llumiro(ルミロ)」の技術面の特長は、大きく2つある。ひとつは、オイルランプのような情緒的な明かりをLEDで再現するために、「導光ロッド」の表面に約2万個のマイクロプリズム(小さなくぼみ)を施したことだ。光を任意の方向に反射・屈折させるレンズ効果があり、本体下部に内蔵されたLEDの光を受けると、このマイクロプリズムがきらめく。視線の角度によって、前面と背面にあるプリズムの位置や重なりにより、多様な表情を見せる仕組みになっている。
もうひとつは、前述した「Broad Washer(ブロードウォッシャー)」にも採用されている、導光技術 (光を任意の方向に反射・屈折させる技術)である。光の出る方向や光り方を自在に制御できる技術である。「llumiro(ルミロ)」では、マイクロプリズムのひとつひとつをコントロールして、下方部を明るく照らしながら、人が滞在眺めることを想定し、人の視線の方向への光を抑制する配光設計がなされた。
マイクロプリズムの密度や配置、形状を変えて、情緒的で表情豊かな4種類の光り方がデザインされた。
人が集まる広場やグランピング施設などを想定して賑わいを演出する、ロッド中央が明るく光る「コアタイプ」。オフィスなどに安らぎをもたらす、ロッド上部が最も明るく、上から下へ降り注ぐように光る「グラデーションタイプ」。
照射面が床にリズミカルな光を描く「ラインタイプ」は、商業施設などに華やかさを与えることを想定して開発した。星屑のような光の粒がキラキラときらめく「トゥインクルタイプ」は、ホテルなどにロマンチックな空間を演出する。
またプロダクトのサイズにおいては、植栽に馴染む350mmと、より広範囲を照らす650mmの2種類の高さを用意し、場の用途や雰囲気に合わせて選べるようにした。
屋外空間での「llumiro(ルミロ)」の可能性
多彩な表情が楽しめる屋外照明「llumiro(ルミロ)」は、さまざまな場所への活用が期待される。デザインの持つ可能性を起点に、領域を横断した多様なコンサルティングワークを行うAXISデザイン研究所の遠藤えりかと庄司 怜に、「llumiro(ルミロ)」の活用の可能性を聞いてみた。
遠藤は、「llumiro(ルミロ)」の活用によってそこに集う人々の楽しみ方が広がり、まちの新たな風景が生まれるのではないかと考える。
「ヒューマンスケールな都市計画が推進される中で、日本の公共的な屋外空間において、人の拠り所となる、自由な居場所が出てきています。たとえば、とある駅構外にある広場では、階段状のウッドデッキに腰掛けたり、テーブル代わりにしたりして、本を読んだり、会話を楽しんだり、コーヒーを飲んだりと、思い思いに過ごしている光景を目にします。『llumiro(ルミロ)』がそうした場所に組み込まれたら、テーブルランプのような明かりにもなりえる。日中だけでなく、夜間の楽しみ方も広がると思います。近年、建物内に屋外空間の要素を持ち込んだり、屋外に室内空間のしつらえをしたりと、屋外と屋内の境界がますます曖昧になってきています。そのような状況下で、外構照明でありながら、人の傍に置かれる明かりという価値をもった『llumiro(ルミロ)』は、アイデア次第でいろいろな使い方ができると思います」。
人の視点に立って考えられた、人に寄り添う光
庄司は、人を起点にデザインを考え、暮らしに寄り添い続けるパナソニックらしさを「llumiro(ルミロ)」から強く感じたという。
「商業施設や複合施設の中にも、目的もなくふらっと訪れて過ごせる余白のある空間を見かけるようになりましたね。ただ座ってゆっくりと過ごせる居心地の良さがあるから、人が自然と集まってくる。人の視点に立って考えられ、設計された場だと感じます。コロナの影響もあって自然への関心も高まり、キャンプやたき火に注目が集まるなど、温かみのある明かりを求め、人間らしいより豊かな暮らしや場を大切にする人が増えています。『llumiro(ルミロ)』は、オイルランプの温かみのある明かりから着想され、外観から環境調和はもちろん、光の存在まで丁寧に設計されていて、まさに人の視点に立って考えて開発されたものだと感じました。こういった人に寄り添う製品が公共空間に広がっていくことで、空間に対する考え方やそこでの過ごし方など、人の意識や行動を変えていき、街全体、社会そのものが豊かになっていくと思います。今後、『llumiro(ルミロ)』がどのような空間に入っていくのか楽しみですね」。
そのほかにも、美術館や博物館、学校、オフィス、マンション、公開空地など、さまざまな空間での展開が考えられる。街中や身近な場所に、この情緒的な表情のある光が灯っていたら、ほっとするような幸せな気持ちに包まれ、日々の暮らしを豊かに彩ってくれる存在になるだろう。