大気中の水蒸気を飲料水に変える!
パッシブな装置をスイスの大学が開発

地球温暖化により、世界各地で気温の上昇が確認されている。これに伴って問題となるのが「渇水」である。水の問題は、私たちの飲み水だけでなく、農作物の収穫にも深刻な影響を及ぼしてしまう。海水を淡水化するにも大量の電力を消費してしまうという。

こうした水不足に取り組むため、スイス連邦工科大学チューリッヒ校では、エネルギーを使わずに、一日中大気から飲料水を抽出する装置を開発しているそうだ。

この装置は、特殊なコーティングを施したガラス板でできており、日差しを反射するだけでなく、大気を通じて外の空間にその熱を放射するので、周囲の温度よりも摂氏15度も低くすることができる。

▲The pilot condenser atop an ETH Zurich building. (Photograph: ETH Zurich / Iwan Hächler)

ガラス板のコーティングは、特別に設計されたポリマーと銀層でできている。そこでは特定の波長の赤外線を外に放射するそうで、ガラス板の下側では、大気中に含まれる水蒸気が凝縮されて、水を確保することができるのだ。このプロセスは、冬になると窓ガラスにできる結露と同じものである。

さらに、もうひとつの重要な要素として、円錐形の放射シールドがある。これは、大気からの熱放射を大幅にそらせて、入ってくる日射からガラス板を保護すると同時に、熱を外側に放射してパッシブに自己冷却を実現する。

▲Schematic of the condensator. (Source: Haechler I et al. Science Advances 2021, edited)

研究グループの実験では、直径10cmのガラス板を搭載した装置を作製。自然条件で1日あたり4.6mlの水を得ることができたという。もちろん、装置を大型化すればより多くの水を確保できるわけで、条件がそろえば、1時間でガラス板1平方メートルあたり最大0.53デシリットの水を採ることができるとしている。

当初の目標は、水不足の発展途上国や新興国向けに新しい技術を開発することだったそうだが、それ以外の国々でも、この技術を応用した大規模な装置が求められる日はそう遠くないかもしれない。End