特集
創造のためのアーカイブ
アーカイブという言葉から連想するものはなんだろう。それは保存や記録だったり、公文書だったり、博物館の収蔵庫だったりするかもしれない。デジタル技術の発展により、アーカイブの対象は日々拡大している。そこには個人のささやかな日常の記録までも含まれている。未来に向かうために、今、その価値が日本でも認識されはじめた。人々の想いや行動、知識の集積と言えるアーカイブは、クリエイティビティとも深いつながりを持っているはずだ。
Vol.190 | 2017年11月01日 発売 |
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定価: | 1,800円 |
表紙: | 表紙イラストレーション 新田裕樹 |
016
クリエイティビティの遺伝子を秘めた未来のアーカイブとは?― 吉見俊哉教授インタビュー
2000年以降、デジタル技術が加速度的に発達するにつれ、「アーカイブ」という言葉が広く一般に使われるようになった。収蔵機関のみならず、あらゆる機関、個人が各々の記録の保存に意識を向けはじめたからだ。保存対象のカテゴリーも膨らむなか、アーカイブの可能性を模索し、新たな取り組みを推進してきたのが、東京大学大学院情報学環の吉見俊哉教授である。なぜ今、社会がアーカイブを必要としているのか。その意義、本質について語ってもらった。
018
情報の公正な後見人としてのアーキビスト―ヴィクトリア&アルバート博物館アーカイブ
ロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館(V&A)は、世界各地の歴史的な工芸品や家具といった調度品のみならず、現代のポスターや服飾、電化製品までを網羅する世界有数の国立博物館。その一組織であるV&Aアーカイブでは英国のアートやデザインを研究し、理解するための資料を保存管理している。シニアアーキビストのクリストファー・マースデンが博物館におけるアーキビストの役割を語る。
022
わたしにとってのアーカイブ Part1 | 都築響一、高橋真知、色部義昭
過去の記録や記憶というだけではない、今を生きる人間の創造性を駆り立てるアーカイブにはどんなものがあるのか。6名の立場から紹介する。
024
アーカイブされるモノとコトの始まり―ブルネロ クチネリ
高級カシミアのファッションブランドとして知られるブルネロ クチネリ。拠点を構えるイタリアの小村で展開されるのは、職人の伝統技術や土地の記憶といった無形の資産を未来につなげていく取り組みだ。堆積した時間を継承し、次世代へと伝えることにもアーカイブの役割は生かされる。
028
現在にも通じる方法で、ストーリーを語るために―ハーマンミラー
保存するためのアーカイブから使うアーカイブへ。無数のコレクションを持つハーマンミラーは、3年前にアーカイブの意味を大きく変えた。物理的な製品から技術的な図面、材料のテスト報告書、ビジネス書簡、そして広告まで、幅広い同社のコレクションは、未来のアイデンティティ探求に向けて役立てられている。
032
身体と行動のアーカイブ―ライフログを徹底したとき、私たちに何が起きるのか。
その日の行動を反省するつもりが、分単位で行動を記録しはじめる。読んだ本をメモするつもりが、人生でインプットしてきたものを(出会った人々まで含めて!)データベース化しはじめる。凝り性の男がライフログを徹底したときに生じた変化とは?
034
インターネットアーカイブ、ブリュースター・ケール、インタビュー
インターネット上に公開されたウェブページを保存し、サーバーから削除されたコンテンツも閲覧できるインターネットアーカイブ。現在はテレビ番組やオーディオなど対象を広げて、世界各地にサーバーを置き、複製を備えている。立ち上げたのはインターネット起業家のブリュースター・ケール。なぜインターネットアーカイブを立ち上げたのか、その考えを聞いた。
038
ローカリティーを価値の源泉に― 山梨デザインアーカイブ
文化財の保護と伝承を目的に、伝統工芸品や美術作品をデジタルデータとして収集する動きはこれまでも見られる活動だった。今、山梨県が取り組んでいるのは、こうしたデータをデザインソースとして活用していこうとする試みだ。貴重な文化財を収集・保護すると同時に、整理・分類して利活用するための仕組みとはどのようなものか。
041
変化を予測し、未来に備えるアーカイブのすすめ―スモール・データ・インダストリーズ
作品やコンテンツをデジタル化してアーカイブする動きがさまざまな分野で広がっている。なかでも近年、その重要性が認識され、動きを加速させているのがミュージアムだ。ニューヨーク近代美術館などでデジタルアーカイブシステムの構築に携わり、現在、スモール・データ・インダストリーズを主宰するベン・フィノ・ラディンは、作品の単なるデジタル化ではなく、将来起こり得る事態を見据えたアーカイブの構築が、今後ますます重要になると説く。
044
わたしにとってのアーカイブ Part2 | トード・ボーンチェ、水野 祐、中山晴奈
過去の記録や記憶というだけではない、今を生きる人間の創造性を駆り立てるアーカイブにはどんなものがあるのか。6名の立場から紹介する。
046
膨大な資料をどのように読み取り、編集するか?―カッシーナ
歴史や史実を風化させない目的で編纂されることの多い社史やカタログもまた、アーカイブのひとつの形態と言える。80周年と90周年というメモリアルイヤーに、それぞれ異なるアプローチの本を刊行したイタリアの高級家具メーカー、カッシーナ。デジタルアーカイブが進む現代において、あえて本というメディアにこだわり、創造の礎を未来へつなげようとする同社の取り組みを考えてみたい。
050
野見山 桜×高橋恒一×林 要―
クリエイティビティのあり処を巡って
アーカイブX人工知能の可能性とは?
おびただしい情報が分類・編集されるアーカイブ。ここから新たなクリエイティビティを生み出すために、テクノロジーはどう役立てられるのか。デザイン史家、脳型コンピュータの研究者、ロボット開発者の3者が、アーカイブと人間の記憶について議論を交わした。
007
高宮慎一 ベンチャーキャピタル流デザイン講
065
LEADERS
槇 文彦(建築家)
070
Sci Tech File
生命の始まりを探しに深海へ、そして宇宙の海の探査へも
076
INSIGHT
ニットを着た顔のないロボットが示すエモーショナル・インテリジェンス
082
INSIGHT
新たな文学体験を切り拓く試み―上田岳弘/新潮社/ Takram/ヤフー「キュー」プロジェクト
088
INSIGHT
源流をたどり、現代にリファインする― TIME & STYLE 吉田龍太郎の見つめる日本の佇まい
094
INSIGHT
「眠り」で目覚めるクリエイティビティ
100
INSIGHT
瞬間を切り出し、グラフィックに動きを与えるフィリップ・アペロワの試み
106
クリエイターズナビ
辻 恵子、マイケル・ジョージ・ヘムス、吉村紘一、グレート・シングス・トゥ・ピープル(gt2P)、
西林佳寿子、矢野大輔、ヨシダナギ
112
田川欣哉のBTCトークジャム
ゲスト: 篠田真貴子(ほぼ日 取締役CFO管理部長)
118
& DESIGN
菅野 薫(テクノロジー)、土田貴宏(インテリア)、君島佐和子(フード)、太田睦子(アート)
122
書評― 創造へのつながり
坂倉杏介、田中ゆり、川田 修
125
寺尾 玄 Pop Gap Creative
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