商品化への道のり
「武州工業」【後編】

「世界最高レベルのパイプ曲げ加工技術」という武州工業が出したテーマに対して、デザイナーからのデザイン提案が10件以上寄せられたという。その中で、経営企画チームリーダーの林 英徳氏が「迷うことなく飛びついた」というのがデザイナーの小関隆一氏からの提案だった。それは曲げられたパイプのパーツをつないで自由な造形を楽しむことができる知育玩具「pipegram」の提案。ターゲットとするのは子や孫のために確かなものを買い与えたいと考える親や壮年者層だ。

東京ビジネスデザインアワードへの応募にあたり、企業側からのブリーフィングに参加した小関氏は「これまで人目に触れることのない部品をつくってきたけれど、自社ブランドで人目に触れる製品をつくってみたい」という林 英夫社長の言葉に共感したという。「ものをつくる人間にとって、せっかくならエンドユーザーに使ってもらう製品をつくりたいと思うのは自然なこと。それを一緒につくっていきたいと思ったんです」と武州工業のテーマに応募した理由を述べる。目に見えないものよりも人が手に取って使うものをつくりたい。それはデザイナーにとっても同じことだろう。加えて東京ビジネスデザインアワードには「メーカーがものをつくる気で本気になって応募してきている。それがデザイナーの私にとっていちばんのモチベーションになりました」と小関氏はいう。製品のデザイン以外にも、いくつもあるパイプのパーツを1つずつ収めることができるようにパッケージを工夫した。さらにウェブ、パンフレットまでトータルにディレクションを担当。ブランディングを一から構築していく。ゆくゆくは「レゴで遊ぶといったら誰もがイメージできるように、pipegramといったらイメージできるほど、ブランドとしての認知度を高めたい」と大きな目標を掲げる。そういう小関氏の目は、すでに先々の構想が浮かんでいると語っているようだった。(取材・文/ 長谷川香苗)

製品名の「pipegram」はパイプで表現するという思いを込めた造語。パイプを樹脂の留め具でつなぐだけのシンプルな構造。想像力の数だけ造形のバリエーションができそうだ。パイプが主役という斬新なアイデアでありながら、武州工業の既存の設備、技術をそのまま生かすことができるという配慮も十分。

▲手曲げ具でRをつけていく

▲手前にある機具は3本ローラー。現状、Pipegramのパイプ加工は手曲げ具と3本ローラーだけで生産可能。コンピュータをつかったNC加工と異なり、人の手で機具を動かすため微妙なRの調整も可能だが、今後は量産に対応するための体制へと変えていく予定。

▲図面通りのRができているかチェック

▲左よりデザイナーの小関隆一氏、武州工業 代表取締役 林 英夫氏、経営企画チームリーダー 林 英徳氏

Photo by Kaori Nishida

6月4日〜6月6日 国際見本市インテリア ライフスタイルにて展示中
http://www.interior-lifestyle.com

pipegram 公式ウェブサイトはこちら

東京ビジネスデザインアワードのホームページはこちら

前編はこちら