「境界」から考える。

特集

「境界」から考える。

私たちが暮らす世界や社会は境界に満ちています。国や場所を特定する物理的な境界もあれば、自己と他者など人間関係や感情などが絡む心理的な境界も少なくありません。これまでとは異なる生活スタイルが広がったコロナ禍では、リアルとバーチャルのコミュニケーションなど、従来の“区分”や“領域”の境界線が曖昧になった部分も数多く出現しました。そんな移ろいやすくもある境界を通して、世界を俯瞰し、将来もたらされる新たな価値や枠組みを考えてみたいというのが本号の特集です。自らが主体となって描く境界を介して、社会に対する新しい見方と想像力を示していきます。

Vol.2142021年11月01日 発売
定価:1,800円
表紙:佐々木香菜子

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018

郡司ペギオ幸夫インタビュー

想定している思考の枠組みの、向こう側との付き合い方

自然と人工、内部と外部、私と他者、つくり手と使い手……。こうしたわかりやすい区分けはしばしば二項対立を煽るだけでなく、既知の枠組みに縛られた発想しか生み出さないという問題も生じさせる。想定外の課題への対処が求められる今、デザイナーに必要なのは境界の外部と接続することかもしれない。想定外の外部を受容し、豊かな共存の思想「天然知能」を説く哲学者に聞いた。

想定している思考の枠組みの、向こう側との付き合い方

024

建築とランドスケープの境界を問い直す

建物や空間に出入りすることは、建築のもっとも基本的な行為であり、同時に外部と内部の境界をどう横断するかは、人と環境の関係を考えるうえで常に大きなテーマとなってきた。ハーバード大学デザイン大学院で教鞭をとるシルビア・ベネディートは、体感や科学的計測を組み合わせることで、両者の境界は大きく変わる可能性があると説く。

建築とランドスケープの境界を問い直す

028

ポートランド州立大学公益デザインセンターに見る、境界線を越えるソーシャルプロセス

オレゴン州のポートランド州立大学の公益デザインセンター(CPID)でディレクターを務めるセルジオ・パレローニ教授。氏はキャリアを通して境界線を再考することを続けてきた。変化する社会の関係性やニーズに対応するために境界線の再考が不可欠という。

ポートランド州立大学公益デザインセンターに見る、境界線を越えるソーシャルプロセス

032

三越伊勢丹ビジネスソリューション事業部、大成建設先端デザイン室

境界線を引き直し、組織の力を最大化させる

目の前のクライアントに対峙しながらも、社会課題の解決をはじめ多面的な視点や自発的な提案が求められる昨今のビジネスシーン。提供するソリューションの価値を最大化すべく、コロナ禍を経て立ち上がったふたつの組織に見る、高くそびえる強固な壁の越え方とは?

境界線を引き直し、組織の力を最大化させる

036

「 人間中心」の境界から、「自然中心」の境界へ

「里山十帖」「講 大津百町」「箱根本箱」など、地域の風土や文化を活かした宿づくりで高い評価を得る自遊人代表の岩佐十良さんは、ローカルガストロノミーの提唱者でもある。行政区分による境界ではなく、地形や地質の上に描き出される新たな境界から、ローカルガストロノミーの発想を促す岩佐さんの思考を追った。

「 人間中心」の境界から、「自然中心」の境界へ

042

特別寄稿 深澤直人

デザインとアートの境界

デザインとアートの違いについては、過去に幾多の議論が繰り広げられてきた。イノベーションの実現に向けてデザイナーやアーティストの潜在能力に関心が高まる現代において、両者の距離は近接しているようにも見える。日本を代表するプロダクトデザイナーで、日本民藝館館長を務める深澤直人が、この壮大な問いに迫る。

デザインとアートの境界

048

パオラ・アントネッリとアリス・ローソーン

「 境界を引き直す」ことで生まれる未来

課題が山積する現代社会。テクノロジーの進化や地球環境の激変は、従来規定されていた「境界」の意味を変容させ、それに伴ってさまざまな問題を生み出している。ならば解決への道筋は、境界を引き直すことにあるのかもしれない。デザイン評論家として国際的に知られるパオラ・アントネッリとアリス・ローソーンに、今注目するボーダー・チェンジ・プロジェクトを聞いた。

「 境界を引き直す」ことで生まれる未来

056

(No) Border が示す、未来と近接する現在

次なる社会をつくっていくZ 世代は今、どんなボーダーを感じているのだろうか。それをビジュアルに示す展覧会が9月、GOOD DESIGN Marunouchiで開催された。東京藝術大学デザイン科3 年生による「(No) Border 展」である。2030 年のボーダーレスな未来に生きる人々を夢想するという課題の成果展で、外見に基づく差別や偏見、生と死のボーダーなど、グループワークによる5つの意欲作が発表された。。

(No) Border が示す、未来と近接する現在

062

ドミニク・チェン×清水淳子

境界を引き直す意味とその可能性

昨年秋、情報学研究者・早稲田大学文化構想学部准教授のドミニク・チェンは、言語からビジュアル、フィジカルまで幅広い翻訳手法をテーマに「トランスレーションズ」展を企画した。参加者のひとりにと声をかけたのが、グラフィックレコーダーとして活動しながら情報視覚言語を研究してきた清水淳子だ。清水は現在、多摩美術大学で境界の再設定を通じて未来の社会を考察する「リボーダーデザイン」というゼミを手がける。そんなふたりが境界をテーマに語り合った。

境界を引き直す意味とその可能性

006

Close-Up

北陸工芸の祭典 GO FOR KOGEI

069

LEADERS

澤田智洋(コピーライター、世界ゆるスポーツ協会代表理事)

074

Sci Tech File

現生動物から化石の謎を解き明かす 進化のリバースエンジニアリング

080

Insight

吉岡徳仁の“本源に遡る” デザイン
― LIXILと表した「かたち」に込めた想いとは

086

Insight

ロンドン・デザインミュージアム「スニーカーを紐解く」キュレーターインタビュー

092

Insight

現代のコンビニ食を考えるパッケージデザインプロジェクト

098

Insight

トマス・ヘザウィックと中国IMモーターズ
―都市空間におけるインテリジェントEVの未来

104

Insight

d.school サラ・スタイン・グリーンバーグ インタビュー

創造的アイデアを引き出す81種のエクササイズ

110

田川欣哉のBTCトークジャーム

ゲスト:藤井輝夫(東京大学総長)

116

& DESIGN

インテリア(土田貴宏)、アート(太田睦子)、フード(君島佐和子)、ビジネス(長谷川敦士)

121

クリエイターズナビ

前田 景、リーサ・ヒエタネン、片岡聖登、ワンオブジェ・デザインスタジオ、藤咲 潤

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