プロダクトの領域を超えるシェルター
「Deployable Emergency Shelter」

▲Winner of the year in Product Design – Deployable Emergency Shelter – Henry Glogau Studio

優れた建築やデザインのアイデアと実装を見出し紹介するアワード「Design Educates Awards」は、2022年の受賞者を発表した。

同アワードには「建築デザイン」「プロダクトデザイン」「ユニバーサルデザイン」「レスポンシブデザイン」の4カテゴリーがあり、見た目の美しさや技術的な卓越性だけでなく「教育効果(educational impact)」を備えた、優れた付加価値をもつデザインを求めている。

今回は、「プロダクトデザイン」部門で大賞を受賞したHenry Glogau Studioによる「Deployable Emergency Shelter」を紹介。

米アラスカで取り組んだこのプロジェクトは、極限の環境にあらがうのではなく、むしろこれを有効活用するシェルターの提案で、雪を外側に詰め込むことで天然の断熱材・保護層を作り上げることができる。

このシェルターはハイキングルートなどに配置しておくそうで、緊急時にはわずかな時間で簡単に展開可能。アラスカでは1か月の試験期間中、300〜400mmの積雪があるなか、一般的な冬用テントでは室内と外の温度差が13°Cだったのに対し、このシェルターでは平均で37°Cの温度差を実現したという。

形状は水滴のような形をしており、強風が吹いても風の力を分散させ、なおかつシェルターを地面にしっかりと固定。折り紙のような構造のポケットには小さな乱流が発生し、吹雪でも雪が自然に蓄積して、おのずと断熱・保護層が形成されるそうだ。

また、内部にはマイラー素材を使い、熱を空間内部に反射。折り紙状の外殻は、その内側にグラスファイバーの格子構造が内蔵されており、軽量で、上に立っている70kgの人間が上に立っても壊れないとしている。

Henry Glogau Studioは地元の動植物や雪の洞窟、イヌイットの伝統的な住居「イグルー」などにヒントを得たそうで、雪を建材として活用。バイオミミクリー(生物模倣)や共生というテーマのもと、環境とのつながりを意識し、効果的なソリューションの可能性を追求している。End