REPORT | 建築
2014.03.07 17:52
フェンスの生産量が減っている昨今、既成のフェンスの販売体系のみで考えているとデザインのバリエーションが増えるだけで、売り上げの低迷を止めることは難しい。そこで、一度その枠組みを外すことで、新しいフェンスをデザインしてみようと考えました。まず、既成のフェンスでできる境界を見直しました。透過率や高さ、色などの違いは多様にありますが、それは表面上の違いだけであり、境界としてはどれも線です。
それに対して、樹木型フェンスは点の連続として提案しています。つまり、並べてフェンスとして利用するだけでなく、1本でも成立するフェンスとしました。例えば、1本でシンボルツリーのように設置したり、2本を支柱として竿を掛けて洗濯物を干したりできるかもしれません。あるいは室内で洋服掛けなどに使用しても良いでしょう。ツリーにもできるかもしれません。いろいろな楽しい使い方の可能性が見えてきます。「境界」を改めて考えなおすことで既成概念から解放され、自由に表現ができるという鋳物の良さを最大限に活かせるはずです。
G APARTMENT
G APARTMENTの敷地は、川崎市。小さな4棟の建築群による計画で、それぞれの棟は、3種類のボリュームの箱を4個使用し、敷地の内側に箱の凹凸が生まれるように計画しています。4棟は共用の中庭スペースを囲い込み、それぞれがあたかも公園の中に建ちながら街並を構成するようになっています。
1階の住戸はなるべく大きく土間空間をとり、外部に連続するタタキとともに住人の生活が共用部に溢れることで、住人同士の会話が生まれるのではないか。また、共用の中庭に開きながらも直接向かい合わないように開口を少しだけずらし、お互いのプライバシーを守りつつも自然発生的なコミュニティの生まれる場としての役割を果たせればと考えました。敷地内の木々も住戸間のプライバシーとコミュニティを考慮しながら、近隣のお寺の深い緑と呼応するようにも計画しています。
住人に選択肢があり、コミュニティの生まれる場があります。積極的に関わる住人もいれば、時には遠慮したい人のためのプライベートな空間もある。明快な境界を設けることなく、押し付けがましくない自然発生的なコミュニティが生まれるような場を提供したいと考えました。個性のある共用の中庭が住人の共同体としての意識を高められればと計画しました。
細山の住宅
細山の住宅は川崎市郊外の高台に位置しています。1階部分を半地下にすることで、建物のボリュームを周囲に比べて小さくし、町に対して優しい表情にしました。1階の屋根が大きく跳ね出しているので、夏は陽射しを遮り、雨からも身を守ります。この1階の屋根には全面に芝生を敷いて、2階から自由に出入りできるようになっています。屋根の端部には金物の押さえがなく、まるで芝生がぐるりと屋根に巻き付いているように見えます。
さらに屋根に登って周囲を見渡すと、背景と屋根の芝生が同化して見えるので、屋根がどこで終わっているのかわからなくなります。つまり境界が消えるのです。スケールを押さえることで、地域に寄り添うデザインにして境界を見えにくくすることと、屋上緑化と周囲の緑が同化することで、そこに境界がないように見えること。細山の住宅では、2つの境界について考えました。
Photo by Makoto Yoshida
Photo by Makoto Yoshida
納谷 学/1961年秋田県生まれ。85年芝浦工業大学卒業。85〜87年黒川雅之建築設計事務所、87〜88年野沢正光建築工房に勤務。93年納谷 新と共に納谷建築設計事務所設立。2005〜12年昭和女子大学非常勤講師、07年〜芝浦工業大学大学院非常勤講師、08〜14日本大学非常勤講師を務める。
納谷 新 /1966年秋田県生まれ。91年芝浦工業大学卒業。91〜93年山本理顕設計工場に勤務。93年納谷 学と共に納谷建築設計事務所設立。2005年〜昭和女子大学、東海大学非常勤講師、08年〜芝浦工業大学非常勤講師を務める。
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