REPORT | ファッション
2013.04.05 12:53
フェンディの歴史は、1925年にエドアルドとアデーレ・フェンディ夫妻が、ローマにファー工房を併設した皮革製品店をオープンしたことに始まる。現在、同社のクラフツマンシップを伝える展覧会が東京藝術大学大学美術館で開催中である。
▲ 会場は3つに区切られており、2つ目がファー製品とその技術を紹介するメイン展示室
▲ 米国のデザイナー、ジョアンナ・グラウンダーがメイン展示室の照明とカラーコンセプトを担当
展覧会では1970年から2013年までに制作された代表作24点を展示。同時に、そのクリエイションを支えるために開発されたさまざまな加工技術を紹介する。また、フェンディにとって初の試みとなる「公開工房」の開設により、ファー職人の繊細な手仕事を見学することができる。
▲ 「アストゥッチョ」という名のコートに使われている技術について解説する、本展監修者のエマニュエラ・ノビーレ・ミーノ(美術評論家)
会場奥の「ファーアトリエ」では、職人による素材づくりが常時デモンストレーションされている。手と目で毛の向きや長さなどを見極め、ピンで留めて伸ばし、小さく鋭いカッターで、毛を切らないように薄い皮部分のみに切れ目を入れる、といった服の素材づくりの最も重要な仕事を公開する。
工程の概要を知るだけなら映像で十分だが、職人たちのカッターの握り方や姿勢、素材に向ける視線、触れ方までを目の当たりにでき、息づかいや思考までもがダイレクトに伝わってくるようだ。(文・写真/今村玲子)
▲ 会場いちばん奥が「公開工房」。壁面には、ドローイングや型紙、工具などを展示。中央に職人の作業場を設置する
▲ 熟練のファー職人が常駐して工程の一部をデモンストレーション。会期中には、藝大生と職人によるワークショップも開かれる
▲ 毛皮の裏側に水を噴霧し、ピンで留めて伸ばしているところ
▲ 皮部分のみを裁断する。毛を切ってはならない
▲ 切れ目を開いたところ。この1本1本を縫い合わせて、初めて1枚の布のように使うことができる
▲ コートの裏側に着目した展示。組子細工の木目のような部分は、毛皮のパーツを縫いあわせる伝統技術「レットアウト」
▲ 工程や職人のコメントを紹介する映像が情報を補う
▲ でき上がりのイメージを伝える「キャンバス」
▲ 型紙。この上に毛皮をパズルのように並べて無数のピンで留め、縫いあわせる。テキスタイルと異なり、ここまでの工程がひじょうに難しいとされる
「FENDI – UN ART AUTRE
〜フェンディ もうひとつのアート、クリエイションとイノベーションの軌跡〜」
会期:2013年4月3日(水)〜4月29日(月祝)
休館:月曜(4月29日は開館)
時間:午前10時〜午後5時
会場:東京藝術大学大学美術館
今村玲子/アート・デザインライター。出版社勤務を経て、2005年よりフリーランスとしてデザインとアートに関する執筆活動を開始。現在『AXIS』などに寄稿中。趣味はギャラリー巡り。自身のブログはこちらまで。