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ナオミ R. ポロック 著『Made in Japan: 100 New Products』

『Made in Japan: 100 New Products』
ナオミ R.ポロック 著(Merrell、3,703円)

1989年から日本に暮らし、自らが建築家であることから『New Architecture in Japan』『Hitoshi Abe』『Modern Japanese House』といった書籍をまとめているNaomi R. Pollock氏。

そのポロック氏が、日本人デザイナーの手によって日本でつくられたプロダクト100点を選び、今の日本のライフスタイルや文化を解き明かしたのが本書だ。

正直にいうと、この本を最初見たとき、「なぜ、このプロダクトが選ばれていて、あれがないんだろう?」といくつもの疑問が浮かんだ。けれど、ポロック氏によれば、「建築は国際的だけれど、プロダクトデザインはドメスティック」。つまり、日本人のために考えつくられたものがほとんどで、そこには今の日本のライフスタイルや文化が明確に表れている。そのメッセージが強く感じられるものを選んだというのだ。

例えば、最初に登場するのは寺田尚樹氏のアイスクリームスプーン「15.0%」。ポロック氏は、「アイスクリームを食べるスプーンに3つの形を与えるという繊細な発想、それがタカタレムノスという伝統企業で製造されている」という点に日本らしさを見る。

また、畳という生活スタイルを持つ日本人は、床全体をプラットフォームとして捉えている。そのため、床に置くプロダクトのデザインが、自ずと西欧人も考えとは異なるという。加えて、アメリカと比較した場合、若いデザイナーや小さなスタジオが製品を自主販売するケースが多いと分析する。

ポロック氏によると、「ニューヨークやロンドンのミュージアムショップには多数の日本製品が並んでいる。機能的でかわいく、エレガントでもあると人気は高いが、誰がつくったのか、どのような意図でつくられたのか、そのバックグラウンドは全く伝わっていない」。例えば、カバーに載るマーナの「立つしゃもじ」は自立することで清潔さを保つ。その意図が伝わっていないことに、もどかしさを抱いているようだ。

本書を締めくくるのは、柴田文江氏の炊飯器「ZUTTO」。柴田氏のもう1つの掲載作品は、サイネージ式自動販売機「acure」。確かに、どちらも日本を感じさせるプロダクトと言えるに違いない。海外から見た日本のプロダクトデザインは、私たちが想像している以上に、新鮮な驚きに溢れているようで、その視点は興味深い。

巻頭の寄稿は、布の須藤玲子氏。
ハードカバー、239ページ。