部屋に置かれる小物ひとつとっても、確かな審美眼が注がれているのが北欧雑貨の特徴だろう。それが、デンマークデザインの巨匠と呼ばれるアルネ・ヤコブセンの手によるものであれば、空間との調和も含め、こだわり抜いたデザインはいつまでも色あせない普遍的な価値を約束してくれるはず。

デンマーク国立銀行を設計した際に手がけたウォールクロックをダウンサイジングし、再現した腕時計シリーズは、ヤコブセンのプロダクトとして広く知られるところだが、そこに今回、“幻の名作”と言われるテーブルクロックの復刻ラインが加わった。手がけたのはデンマークを代表するプロダクトカンパニー、ローゼンダール社だ。

1939年に大手電機メーカー、ラウリッツ・クヌーセンの製品として手がけたオリジナルのテーブルクロックは、大戦の影響もありわずかな期間で終売となる憂き目にあった。それ以降は、博物館の展示品としてしか見ることのできなかった希少なオリジナルモデルをローゼンダールでは入手。ラウリッツ・クヌーセンのシニアスタッフの手も借りながら、忠実なデザイン再現が行われた。

開発陣が特にこだわったのが音だという。当時、アラームの電子音の採用に強い意欲を示しながら、実現に至らなかったヤコブセンの思いを引き継ぐかたちで試行錯誤を繰り返し、「彼の抱いたイメージに最も近い音をつくることができた」と自信を見せるほど。さらに、LEDライトやムーブメントセンサー、アラーム機能といった現代的な味付けで、機能性を高めている点も見逃せない。

再現されたテーブルクロックは、ヤコブセンがラウリッツ・クヌーセンと手がけた「LK」「ROMAN」「STATION」に加え、「CITY HALL」「BANKERS」といったウォールクロックベースの計5モデル（￥12,600）。当時のモダニズム思想を受け継いだグラフィックに、美しいプロポーションと繊細なディテールは、どんな空間にも溶け込み、味わいのある時を演出してくれるだろう。

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