当たり前と思っていた日常を一変させてしまった新型コロナウイルスの感染。この世界的危機と言える状況下では、多くの情報が行き交い、あっという間に現在が過去になっていくような変化の激しい日々が続いています。
“過去を見つめることから未来をつくり出す”ことを実践してきたクリエイティブユニットSPREADは、コロナ禍において行動を起こしたクリエイティブな活動をリサーチし、未来を考えるヒントを探ります。本ウェブでは、SPREADが特に注目するものを毎日1本ずつ紹介していきます。
今日のトピック
Lush Middle Eastが、アラブ首長国連邦(UAE)で最大のフードデリバリー会社のひとつであるDeliverooと提携し、30秒間しっかり手洗いをすると使いきれるサイズの石鹸「30-Second Soap」を制作しました。6月から注文があったすべての顧客に無料配布しています。
SPREADはこう見る
「30-Second Soap」は、WHOが提唱する正しい手洗いにかける20~30秒をUAEの人々に浸透させるために考案されました。同国ではフードデリバリーやテイクアウトが日常的に行われているため、Deliverooとの連携は効率的に周知する手段になります。パッケージは、100%リサイクル可能な環境に配慮した素材が使われており、使い切りサイズのため衛生的です。6月12日までに16,000個が配布され、ウェブサイトを通じて世界中から27,000人の注文が寄せられたそうです。
WHOの調査によると、世界中の人々の97%は適切な手洗いができておらず、無意識のうちに感染リスクにさらされているとのこと。正しい手洗いの習慣が根付いていないことがわかります。
今回の石鹸も含め、世界中でマスクの着用や消毒液の設置などの衛生管理のための取り組みは数多く行われています。それでも徹底されない理由としては、想像している以上に各地域の衛生観念の違いが影響しているのではないでしょうか。
ヨーロッパに住む知人から聞いたのですが、パンデミック以降も人々は外出時のマスク着用に抵抗感を感じているそうです。一説では、「どうやったらマスクをしなくて済むか」と考えた結果リモートワークが広まった、という話もあります。また、外出時のマスク着用義務化に対抗するため、飲み物を片手に持って外出することで「飲食中だから仕方なくマスクを外している」という状況を演出する人々もいるとか。「マスクくらいすれば良いのに」と思いがちですが、それほどまでに抵抗があるということなのでしょう。
マスク同様、手を洗う習慣がない国でも「30-Second Soap」を使っているうちに、正しい方法と30秒の感覚を体で覚えられそうです。そうすることで地道に生活に根付かせるきっかけを増やしていくしかないのかもしれません。