「Clap for Cares」の発案者、感謝を
伝える拍手を止めて次なる行動へ移行
するべきだと発信。

当たり前と思っていた日常を一変させてしまった新型コロナウイルスの感染。この世界的危機と言える状況下では、多くの情報が行き交い、あっという間に現在が過去になっていくような変化の激しい日々が続いています。

“過去を見つめることから未来をつくり出す”ことを実践してきたクリエイティブユニットSPREADは、コロナ禍において行動を起こしたクリエイティブな活動をリサーチし、未来を考えるヒントを探ります。本ウェブでは、SPREADが特に注目するものを毎日1本ずつ紹介していきます。

今日のトピック

英国で3月下旬から始まった、エッセンシャルワーカーに感謝を伝えるために拍手をおくる活動「Clap for Cares」。その発案者であるアンネマリー・プラスさん(Annemarie Plas)が、5月28日に拍手を止め、新しい方法でエッセンシャルワーカーをサポートするべきだと発信しました。

SPREADはこう見る

拍手や歓声は、誰もが簡単に感謝を伝えられる行動です。コロナウイルスを機に世界中の人々がエッセンシャルワーカーの方々に感謝と賞賛を伝えようとその活動は次々と広がり、都市ごとに決まった時間に実施されました。

3月上旬、外出制限が行われていたパリでは毎週火曜日の午後8時にバルコニーから拍手や歓声が送られました。当時のフランスのコロナウイルスによる死者数は約150人、感染者数は約6600人に達していました。ロサンゼルスでは毎日午後8時に、ジュネーブでは3月末から午後9時に、毎日恒例の風景になっていました。

そんな中、SNSで医療従事者の方の本音が綴られた投稿を目にすることがありました。彼らがパンデミックの最前線に身を置くのは、正義感からではなく仕事だからやっていること。まるで英雄のように扱われるのは納得いかないと感じる人もいるのだと知りハッとさせられました。そこで「拍手で終わって良いのか」「そもそも拍手が必ずしも喜ばれるわけではない」の2つの考えが頭をよぎりました。

英の地方新聞「Swindon Advertiser」のwebサイトに投稿された6月4日の記事では、今夜拍手をするか読者にアンケートをとったところ、7289票のうち61%の人が参加しないと答えました。「Clap for Cares」をはじめとして長く続いた感謝を伝える活動は、物資の寄付や個人の感染対策といった具体的な支援へ移行するタイミングなのかもしれません。たとえば、働きづめで休む暇もない方を支援したい方はキャンピングカーで医療現場を支援しようとするプロジェクトのクラウドファンディングを。日本だけではなく、世界中の医療現場を支えたい方は国境なき医師団への新型コロナウイルス感染症危機対応募金に協力してみてはいかがでしょうか。

また、有事の時だけ讃えられることが逆に当事者の負担になることもあるのだと気付かされます。もちろん拍手を心の支えにされた方々も確実にいます。しかし「仕事でなければ家族とともに自宅待機をしたい」と考えながら出勤しなければいけない現実もあったはずです。

私たちの生活を維持する最前線で働いてくださるエッセンシャルワーカーの皆さんへの感謝はもちろん大切なことです。でも、感謝をどのように伝えるのかについては、慎重に考えて行動していきたいと改めて思うできごとでした。End

▲本プロジェクトをレーダーチャードで示しました。6つの属性のうち、成果物のデザイン性を「Creativity」で評価しています。「Pure & Bold」は目的に対して一途な強さを感じるか、やりきっているかという、SPREADが自らの仕事において大切にしている視点です。