世の中には、年代物のジーンズを「発掘」して高値で取り引きするデニムハンターなる職業が存在するように、量産された工業製品であっても価値が認められれば、巨大なリセール市場が構築される。例えば、ビンテージのスニーカーやウォッチなどはその典型で、ストリートウェアやハンドバッグ類、コレクション性の高いフィギュアなども後に続く存在だ。
しかし、希少なアイテムほど偽造品が出回っていることもあって購入を躊躇したり、正規の品物であっても何が適正価格なのかわからなくなるというジレンマを抱えている。一般的なオンラインオークションでは、程度がほぼ等しいと思える中古品でも売り手によって開始値にばらつきがあり、品物が届いてから偽物であることが判明するケースも少なくない。
こうした希少なアイテムを中心に扱うマーケットプレイスとして、2015年にアメリカのデトロイトで設立され、6月1日に日本でもサービスが開始されたストックXは、文字通り、株式市場を模した価格変動データを提示することにより、バイヤーに対して購入や付け値の判断材料を与えて成功した。
加えて、価値や出自の不透明さを払拭するために、商品をいったんストックXに送ることをセラーに義務付け、専門家による鑑定を行ったうえで正規品保証タグを付加してバイヤーに届けるシステムを採用。万が一、売買の対象にコピー商品が含まれていた場合には、そのまま返送してバイヤーには返金を行い、被害が出ないようにしている。
ストックXは、リセール市場においてこのような仕組みを確立することで、サービス提供者としての競争優位性を取得し、顧客の選択と品質に関する期待に応え、消費の可能性が増えるような技術革新を行った。また、市場からコピー商品を排除する取り組みを通じて、持続可能な経済に関する貢献ともなっている。これらの要素は、すべて、あるべきサービスデザインの姿に含まれるものであり、新たな視点や発想によってリセール市場を活性化させた好例といえるだろう。