社会的距離をとりながら公園を楽しむ。
ミラノ市の呼びかけにデザインスタジオ、
SBGAブレンギニ ギラデリが携帯可能なツールを提案

当たり前と思っていた日常を一変させてしまった新型コロナウイルスの感染。この世界的危機と言える状況下では、多くの情報が行き交い、あっという間に現在が過去になっていくような変化の激しい日々が続いています。

“過去を見つめることから未来をつくり出す”ことを実践してきたクリエイティブユニットSPREADは、コロナ禍において行動を起こしたクリエイティブな活動をリサーチし、未来を考えるヒントを探ります。本ウェブでは、SPREADが特に注目するものを毎日1本ずつ紹介していきます。

今日のトピック

イタリアのデザインスタジオ、SBGAブレンギニ ギラデリ(SBGA Blengini Ghirardelli)は、ミラノ市からの呼びかけに対しソーシャル・ディスタンシングを守りながら公園を利用するためのツール「C’entro」を提案しました。

SPREADはこう見る

「C’entro」は、グラスファイバー製の棒のパーツをつないでつくった直径2mほどのサークルを地面に置いて使います。そのサークルが視覚的に社会的距離を伝える境界線となります。サークル内には2人座ることができ、サークルに取り付けた1.5mの棒によって他のサークルとの距離を保つことができます。この棒でサークル同士をつなげば複数の人との交流も可能。パネルなどの障壁で遮ることなく、パーツは折りたたんで持ち運べる重さとサイズです。将来的に実用化を目指しています。

緑の芝生の上に置かれたカラフルなサークルとそこで人々が楽しむ風景は、見ていて明るい気持ちになります。コロナの感染リスクに注意しながらも、できる限りバリアを設けずにコミュニケーションをとれる生活が訪れることを願います。

ロックダウンのさなか、ミラノ市長のジュゼッペ・サラ氏は、公共スペースの利用を再開するためのアイデアを求める、とFacebookで発信しました。SBGAブレンギニ ギラデリは、その呼びかけに応え5月には「C’entro」の案を市長に提出しました。自治体の要望に対して一市民であるデザイナーが提案する様子は、ミラノにとってデザインが身近な存在であることを表しているようです。

社会問題をデザインで解決するためには、行政とデザイナーの関係性が重要だと考えます。例えば、横断歩道で信号待ちをしているとき、気持ちがはやって、つい前に詰めてしまうことがあります。このような場所に適切な距離を示す道路標示があれば、毎日の生活のなかで社会的距離の感覚が身につくかもしれません。こういった全国規模の取り組みには、行政の関与が必要になります。行政は「3密を避けましょう」など、感染対策の方針を出しますが、どう避けるのか、その具体策にまで関わってもらえるとよいのかもしれません。

ミラノ市は、解決策を市民に問いかけました。このように、まずは行政など公的機関が改善すべき問題を広く問いかけてくれることを望みます。End

SBGA Blengini Ghirardelli
ミラノを拠点とするデザインスタジオ。都市計画、建築、インテリア、プロダクトなど多岐にわたるデザインを手がける。

▲本プロジェクトをレーダーチャードで示しました。6つの属性のうち、成果物のデザイン性を「Creativity」で評価しています。「Pure & Bold」は目的に対して一途な強さを感じるか、やりきっているかという、SPREADが自らの仕事において大切にしている視点です。