当たり前と思っていた日常を一変させてしまった新型コロナウイルスの感染。この世界的危機と言える状況下では、多くの情報が行き交い、あっという間に現在が過去になっていくような変化の激しい日々が続いています。
“過去を見つめることから未来をつくり出す”ことを実践してきたクリエイティブユニットSPREADは、コロナ禍において行動を起こしたクリエイティブな活動をリサーチし、未来を考えるヒントを探ります。本ウェブでは、SPREADが特に注目するものを毎日1本ずつ紹介していきます。
今日のトピック
オランダ・ロッテルダムを拠点とするデザインスタジオ、シフト・アーキテクチャ・アーバニズム(Shift Architecture Urbanism)がソーシャル・ディスタンシングを保ちながら利用できる小規模な屋外市場「Hyperlocal Micro Markets」を提案しています。
SPREADはこう見る
この市場は、トラックによる移動式で、場所さえあれば、どこにでも市場を設営することが可能です。会場には入口がひとつ、出口が2つ設けられ、地面には1マスが4×4m、合計16マスのグリッド状にテープが貼られます。1マスに入れるのはひとりのみ。移動するスペースを考慮して最大6人が入場できます。まるでチェスのように進む方向が決められており、そのルールを守ることで人と人との距離が確保され、コロナウイルス感染のリスクを冒すことなく安全に買い物ができる仕組みです。このような小規模の市場の数が増えれば、利用者を分散でき、混雑も避けられます。同時に生活に密着した昔ながらの市場という場を存続することも可能となり、コロナウイルス感染の第二波の被害を最小限に抑えるためのヒントにもなるかもしれません。
また、この提案の動線を現在中止や延期を余儀なくされているイベントにうまく利用できれば、再開の糸口になるのではないでしょうか。例えば、展覧会や商品発表会への応用には可能性を感じます。それにしても世の中にはイベントがこんなにもあったんだと改めて気付かされました。
これからしばらくは、以前のように人が集まることはできなくなりますが、現場の空気に触れ、実物を見たり、触れたりすることで得られる五感を刺激する体験は、人が生きる上で、なくてはならない重要なものだと思います。オンライン化が進む一方で、そのような機会をどう増やしていくか、新たな課題として捉えていきたいと考えています。
Shift Architecture Urbanism
デザインスタジオ。建築、都市計画、空間計画の分野に重点を置いている。