NEWS | インテリア / グラフィック
2020.04.28 19:02
佐藤オオキ率いるデザインオフィス nendoは、宮城県・気仙沼の臼福本店が操業する遠洋マグロはえ縄漁船「第一昭福丸」の内外装デザインを手がけた。
総重量486トン・乗組員23名の漁船で、メバチマグロやクロマグロなどを漁獲するために、約10カ月間の洋上生活と重労働を行うという。乗組員の心身ストレスは大きく、若手の離職率は5割を超えるそうで、このストレスを少しでも軽減しつつ、若手が憧れをもつようなデザインを目指した。
外装デザインは、船が本来もつ美しいフォルムを活かすために、直線的なパターンを施して船体の曲面を強調。「チガイヤマ・ホシ・イチ」と呼ばれる臼福の屋号を一度分解、それとなく「和」を感じさせるグラフィックパターンへと再構成した。また、この柄を船内の床材などにも活用して内外装に統一した印象をもたせた。
インテリアにも「直線」を利用したデザインを採用。人は本来、長期間の洋上生活には慣れていないので、「陸上」での生活を感じさせるビルや窓、扉、スマートフォンやテレビの画面といった直線を多用した環境を想起させることが安心感に繋がると考えたそうだ。
さらに、病院のように機能性に特化した環境は均質な空間になりがちで、それが心理的なストレスを与えることがある。そこで、直線的なパターンやストライプ、そして素材などをほどよくランダムに配置して場所ごとに特徴を生み出し、この「不均質さ」によって乗組員を飽きさせないことをねらったという。
また、浮遊状態を少しでも忘れられるように、テーブルの天板を通常より厚めにしたり、スツールを切り株のような形状にしたりと、地面にどっしりと根付いているような「重量感」のある家具デザインとした。
国内のマグロ船初のWi-Fi完備を実現、船内の天井を高くして寝台など一人あたりの占有面積を拡大し、マグロを魚倉にスムーズに移動できるスロープを設置するなど、機能面でもさまざまな改善を施している。