広島・呉駅前にオープンしたベーカリーショップ「Ripi」
ファゾムが手がけた感覚的な透明度の高い空間

広島県呉市の呉駅前にオープンしたベーカリーショップ「Ripi」。設計を手がけたファゾム(FATHOM)がオーナーから受けた最初の要望は、透明度の高い空間づくりだったそうだ。

厨房と売り場の境界をスチールとガラスで組みフルオープンにできるように仕切ることで、厨房は売り場に開かれライブ感のある演出が可能となった。とはいえ、こうした見た目の透明度を一歩進めて、オーナーが求めるより感覚的な意味での透明度づくりを模索。

そこで新たな手法として、厨房と売り場の設えのバランスを平均的に揃えることで、ふたつの空間の連続性を高めることが感覚的な透明度に繋っていくのではと考えたという。ただふたつの空間をまったく同じにするのではなく、各空間の基本的な設えや機能は残しつつ平均化させることを目指した。

排気フードにボリューム感をもたせ、特殊な石灰ペイントで色むらとグラフィックデザインを入れ込むなど、厨房は少し演出を付与。

一方、売り場は機能的に装飾を少しだけそぎ落とし、照明にはあえて看板照明を用いるなど、厨房機器の一部のように機械的な手法や素材での空間構成を試みた。また、厨房の3段4枚のオーブンをモチーフに、売り場部分にも3 x 4のコンセプトで作られた12本の「/」(スラッシュ)を表すネオンサインを設置し、売り場にもオーブンの気配をもちこんだ。

無機質な素材と色で空間を平均化したことで、有機的なものは中央の白い平台とパン、植栽、人間のみになった。パンの焼く香りや艶感、職人のパンに対する思い、売り手の温もりは、無機質な空間と対比させることで、アートピースのように意思をもち、輝きを放ちながら、訪れた人に雰囲気として自然に伝達していくデザインができあがった。End