自閉症の人のための360度VRシステム「Blue Room」
ニューカッスル大学らが開発

イギリス・ニューカッスル大学の専門家チームがハイテク企業「Third Eye NeuroTech」と共同で開発した「Blue Room」は、自閉症の人が現実世界で感じる不安を改善させる、パーソナライズされた360度の環境を作り出すVRシステムだ。

このバーチャル環境内ではゴーグルは不要で、患者はiPadで操作。横にはセラピストがついており、なおかつ状況は完全に制御されているので、さまざまなシナリオを快適に探索・通行ができるという。

自閉症は子どもの学習や発達に影響を及ぼすとされ、見過ごされがちだが、しばしば社会やコミュニケーションのスキルの低下につながり、不安や恐怖を抱えることも多い。今回の実験では、公共交通機関での移動、学校の教室、犬、風船に対する恐怖症が取り上げられた。

8〜14歳の自閉症の子ども32人を対象とし、ランダム化比較試験を実施。被験者は心理学者とともにBlue Roomでパーソナライズされたシナリオを含む週に4つのセッションを行い、保護者はビデオ画像で治療を見守った。

治療の2週間後、治療群16人のうち4人(25%)が特定の恐怖症に対処できた。この効果は6ヶ月後でも改善を示した6人に残った(38%)。ただ、恐怖症が悪化した人も1人いた。また、対照群では、未治療の参加者5人が6か月以内に症状を悪化させたそうだ。

さらに、18〜57歳の成人の自閉症患者にも実験を行い、6か月後に8人のうち5人がVR治療で恐怖症に改善が見られたそうだ。End