NEWS | サイエンス
2019.02.14 16:27
ブラックホールで起きる現象は直接観察できないが、実験室でのシミュレーションで観察可能ではないか。こうした実験が、ブラジルのSão Paulo Research Foundation(FAPESP)に所属する「Agência FAPESP」から発表された。
この実験では、ブラックホールに特有のプロセスと流体力学のプロセスのある類似性に着目。その共通点とは、いずれも波の伝播が似ていることだという。
この研究を主導したブラジル・ABC連邦大学の物理学者 Maurício Richartz教授によると、同研究自体は理論的なものだが、実際に3m×1.5mの水槽で実験も実施。水を中央の排水管から排出し、これをポンプで戻すと、システムとしては流入量が流出量に等しくなり平衡点に達する。この状態で疑似ブラックホールができる。
ここで重要となるのが、波の伝播の速度と水流全体の速度である。「排水路から離れると波の速度は水流の速度よりはるかに速くなり、波はあらゆる方向に伝播可能になります。ただし、排水口付近では異なり、水流の速度は波の速度よりはるかに速いため、波が反対方向に伝播する場合でも、波は水流に引きずられます。こうして実験室でブラックホールを作ることができます」と同氏は説明する。
また、渦の強さを示す渦度(vorticity)というのも重要な概念だそうで、渦度がゼロの場合、ある領域には単に流体の動きだけがあるが、渦度がゼロでない場合は、その領域は流れとともにそれ自体の質量中心の周りを回転するのだとか。
ともあれ、本物のブラックホールではその重力が物質を捕らえ、光波などあらゆる波は逃れることができないが、このシミュレーションでも、流体の表面の波はできあがった渦から逃げることができないそうだ。