満員電車に揺られながら、当たり前のようにオフィスに通う時代はすでに過去のものとなりつつあります。 テレワークが普及したことでどこでも働ける仕組みが整い、さまざまな世代がリモート環境を経験しました。 コロナが収束すれば、オフィスワークや対面でのコミュニケーションが再び復活するという声は聞かれますが、多くの人々がリモートの利便性を経験した以上、コロナ以前のような働き方に単純に戻るとは考えにくいでしょう。
「クリエイティブの現場には、一見不要なものや余白といった『ちょっとした遊び』が大切」。 先日、某メーカーのデザイン部の方からは、今後のオフィスに必要な要素としてこんな見解が示されました。 あえて仕事とは関係が薄い要素をオフィスに持ち込むことで、「遊び」を許容する文化やものづくりの風土を社内に築こうという狙いがあるようです。
「一緒に炎を囲んで過ごす時間は、自然体でフラットな人間関係を構築しやすい」。 コミュニケーションの観点から「焚き火的なオフィス」の必要性に言及するのは、特集内の対談に登場いただいた関西大学教授の松下慶太さんです。いずれもが、人を詰め込んで効率よく働かせるかつてのオフィス像とは真逆の発想です。
人々の価値観に大きな影響を及ぼしたコロナは、オフィスのあり方にも「グレート・リセット」を突きつけています。 何のために出社して働くか、その目的を企業もワーカーもいっそう意識せざるを得なくなっています。 取材を通じて感じたのは、正解は必ずしもひとつではないということです。ゆえに、オフィスやワークプレイスのデザインを考えるうえで、このうえなく面白い時代になりつつあると言えるのではないでしょうか。
今号の特集は、そんなオフィスのあり方を再構築し、「オフィスにこんにちは」という回帰の流れのヒントを探ります。