vol.35 360エレクトリカル
「ローテーティング・デュプレックス・アウトレット」

いつの頃からか、世の中には多種多様なサイズと形をしたACアダプタがあふれ返るようになった。これらのアダプタは、1つだけならばほとんど悩まずに済むが、複数を使おうとした途端に互いの干渉が始まり、1つのコンセントパネルやテーブルタップに挿せなくなることも多い。

この問題を解決するためにさまざまなテーブルタップが開発され、あるものは差し込み口の間隔をあけ、あるものは差し込み口の向きを変え、またあるものは円周に沿って差し込み口が回転することにより、それぞれACアダプタが干渉しない工夫がなされている。

しかし、その名も360エレクトリカルというメーカーが開発した製品ほど、ラジカルかつシンプルな解決法はないだろう。同社の「ローテーティング・デュプレックス・アウトレット」は、360度回転する差し込み口が2口付いたコンセントパネルであり、既存のパネル自体を交換することにより、根源的な部分でACアダプタを受け入れようというアイデアだ。

考えてみれば、コンセントパネルはACアダプタなど存在しなかった時代に原型がつくられ、ディテールの意匠は変わっても、差し込み口自体は固定されたままで今に至っている。もはや家電製品や情報機器にACアダプタが不可欠ならば、それを前提として室内コンセントがデザインされても良いだろう。

面白いことに、360エレクトリカルのサイトには、画面上でローテーティング・デュプレックス・アウトレットに異なるACアダプタを挿したり、回転させて有効性を確認できるシミュレータが用意されている。

また、同社の携帯用の「パワーカーブ・モバイル・サージ・プロテクター」は、2口の回転式差し込み口と2基のUSBポートを融合した製品だが、コンセントに挿すとスマートフォンなどを充電する際の置き場所としても機能する。こちらは、あえてトレー型にはせず、しかし、そのような使い方もできてしまうカタチに、非凡な着想が感じられるデザインなのである。




大谷和利/テクノロジーライター、東京・原宿にあるセレクトショップ「AssistOn」のアドバイザーであり、自称路上写真家。デザイン、電子機器、自転車、写真に関する執筆のほか、商品企画のコンサルティングも行う。著書は『iPodをつくった男 スティーブ・ジョブズの現場介入型ビジネス』『iPhoneをつくった会社 ケータイ業界を揺るがすアップル社の企業文化』『43のキーワードで読み解く ジョブズ流仕事術:意外とマネできる!ビジネス極意』(以上、アスキー新書)、『Macintosh名機図鑑』『iPhoneカメラ200%活用術』(以上、エイ出版社)、『iPhoneカメラライフ』(BNN新社)、『iBooks Author 制作ハンドブック』(共著、インプレスジャパン)など。最新刊に『成功する会社はなぜ「写真」を大事にするのか』(講談社)がある。